証拠の収集について

民事裁判では,証拠が重要です。

 

例として,Aが,Bに100万円貸したとして,返還を求めたという事案を考えてみます。Bは「借金はしていない」と主張し,Aが借用書などの証拠を提出できず,裁判所がどちらの主張が真実なのか分からない(「真偽不明」といいます)状況になったとします。

この場合,借金があるという事実が証明できなかったことになり,Aが不利益を被り,敗訴することになります。
この事案の場合は,Aが自ら借用書を作成したり,保存したりしていないことから,仕方ないといえるでしょう。

 

しかし,交通事故や医療過誤などの場合,はじめから,裁判の相手側や三者が証拠を持っていることが多いので,証拠の収集はかなり困難になることが多いです。今回はこのような場合の証拠の収集方法について,説明します。

 

例えば,医療過誤の場合,カルテ(診療録)や検査の結果,画像など,裁判で重要となる証拠はほとんど医療機関側にあります。患者が医療過誤について争おうと思っても,まずは,相手側の病院などから証拠を集めたり,裁判所に提出してもらったりしなくてはなりません。

相手側は,自分に不利となる証拠はなかなか提出しようとしないでしょう。また,最悪の場合,証拠を隠滅してしまう可能性もあります。
また,離婚の場合の財産分与の協議において,相手側がどのような財産をどのくらい持っているのか分からずに,困ることもあります。

 

このような場合,証拠収集の方法がいくつかあります。
証拠を隠滅されることを防ぐ方法として予め証拠を確保しておく「証拠保全」,書類を所持している人に依頼する「文書送付嘱託」,官庁や学校などの団体に対して書類の写しなどを求める「調査嘱託」,証拠を裁判所に提出するように命じる「文書提出命令」,などの手続があります。いずれも,その証拠を必要とする人が裁判所に申し立てて,裁判所の判断で行われます。
また,弁護士が,弁護士会を通じて官庁や企業などの団体に対して必要な事項を調査,照会する「弁護士照会」という制度もあります。

 

証拠の収集は,文書等を特定して,裁判所が定める規定に基づいて申し立てる必要があります。専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

 

交通事故,離婚訴訟,借金などに民事事件に関するトラブルがある場合,「証拠がないかも」と思っていても,上記のように様々な制度により証拠を得る方法があります。あきらめないで,当事務所にお気軽にご相談ください。