未払いの残業代と併せて会社に請求することができるお金とは?
未払残業代と「付加金」の請求について
残業をしたのに,残業代が支払われていないと言った場合,労働者は会社に対して,未払い残業代を請求することができます。
このとき,労働者は,未払いの残業代と併せて,「付加金」という金銭も会社に請求することができるのはご存じでしょうか。
付加金とは,残業代など,会社が労働者に対して支払うべき金銭(金銭の内容は法律で定められています。)の支払を怠った場合に,その未払い額と同額を上限として支払いが認められる場合がある金銭で,訴訟となった場合に,裁判所が,会社に対して支払を命じることが認められています(労働基準法114条)。
つまり,会社は労働者に対して,最大で未払い額の倍の金額を支払わなければならない場合があることになります。
“ペナルティ"としての「付加金」
この付加金は,労働者に対して支払うべき金銭の支払を怠った会社への制裁としての性質をもちます。
法律はこのようなペナルティを用意することによって,会社が労働者に不足なく適切に残業代を支払うよう,促しているのです。
残業代は,時効にかからない過去3年分(2020年4月1日「以前」に発生した残業代請求権は過去2年分)まで請求することができますが,この付加金や遅延損害金を合算することによって,請求額が未払い額を大きく上回る金額となるようなケースも珍しくありません。
「付加金」を請求するために知っておきたいこと
多くの給付金のように、自動的に支給されるものではありません。
では、どんなことに注意しておかなければいけないでしょうか。
労働者から請求しなければならない
この付加金は訴訟上でしか請求できないということ,付加金の支払いの命令は、労働者側が請求をしないと認められないものであるいう点です。
「裁判すれば必ず支払われる」とは限らない
裁判所には,付加金の支払を命じる義務はなく,様々な事情を総合的に見て,会社に付加金を支払わせるべきかを判断しますので,付加金が認められないケースも当然存在します。
裁判所は、使用者による違法の程度・態様、労働者の不利益の性質・内容等を勘案して、支払義務の存否及び額を決定するものとされています。
付加金は,裁判所の命令によって支払義務が発生するので、その命令前に使用者が上記の未払割増賃金等を全額支払うと、付加金支払いを命じることはできないとされています。
なお,労働審判手続きで,未払残業代を請求する場合には,労働審判では使用者に対して付加金の支払いを命じることはできないとされています。
ただ,労働審判が出された後,当事者のいずれかからこれに対する異議が出された場合には,労働審判手続きの申立てがなされた時に訴えの提起があったとみなされることから,労働審判手続きで,未払残業代を請求する場合には,併せて,付加金の請求を行っておく必要があります。

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この記事を書いた人:津田和之弁護士
神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)
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