自己破産
自己破産とは?

事業や生活のためにお金を借りたり,クレジットカードの支払いができなくなったり,連帯保証人になったりなどして,借金を支払えなくなることがあります。
自己破産とは、借金の総額が多く自分の財産や収入では返しきれない場合、裁判所に申し立てることによって、払いきれない借金を法律上免除(「免責」といいます。)してもらう手続きです。
返済ができなくなった借金等を整理する「債務整理」の手続きには,大きく分けて,任意整理,破産,再生がありますが、いずれの手続きも,弁護士に依頼した場合は,弁護士が窓口になるので,複雑な交渉や書類の提出等の負担が少なくなります。債権者から債務者への直接の督促も止まります。
今回は、この「自己破産」について説明したいと思います。
自己破産のメリット・デメリット
「自己破産をする」、または「自己破産をしない」を検討する際にはそれぞれのメリットとデメリットを知ることが重要です。
自己破産のメリット
- 免責の決定が出ると、借金の全額(※)について返済する必要がなくなります。
- 生活必需品や古い自動車、一定期間の財産はそのまま所有することができます。
- 給料を差し押さえられている場合、差押えを停止することができます。
債務者は,破産手続開始とともに,借金の支払い義務を免れるための免責許可の申立てを行います。裁判所が,免責許可決定を行えば,返済はしなくてよくなるのです。これが,個人の自己破産の最大のメリットです。
※滞納している税金、養育費は免除されません
自己破産のデメリット
- 原則として住宅など財産を手放す必要があります。
- 主に浪費・ギャンブルによる借金など、免責を認められない場合があります。
- 保証人を立てた借金の場合、保証人に請求が行くことがあり、迷惑をかけてしまうかもしれません。
- 破産手続き期間中は、警備員、保険外交員など、一定の職業に就くことはできません。
- 官報、破産者名簿に記載されます。
- 一定期間(5~7年)信用情報機関に登録され、あらたに借金をすることができなくなります。
自己破産に関する間違った情報にご注意ください
自己破産についてよくある誤解として以下のようなことがよく聞かれます。
- 「選挙権がなくなる」
- 「戸籍に記載される」
- 「会社を解雇される」
このように一般の方は、自己破産に対して非常に暗いイメージを持っているのが通常です。
自己破産をすると戸籍に記載されてしまうのではないか、公民権が剥奪されてしまうのではないか、子供の進学に悪影響が生じるのではないかなど、自己破産に対してマイナスのイメージを持っています。
しかし、自己破産をしても戸籍に記載されることはありませんし、選挙権も被選挙権もなくなりません。もちろん、家族の生活や子供の進学に影響を与えることはありません。
つまり、
自己破産をしても法律上定められていること以外の不利益を受けることはありません。
自己破産も債務者の経済生活の再生を目的にしているため,生活に必要な最低限度の財産は処分しなくてもよいことになっています。法定の「自由財産」は,破産手続開始後に取得した財産(新得財産),衣服や寝具,家具などの生活必需品(差押禁止財産),99万円以下の現金です。これ以外にも,裁判所が決定で自由財産として取り扱うこともあります(自由財産の拡張)。
また、自己破産をしても会社を辞める必要はなく、これは公務員であっても同様です。
ただし、すでに裁判を起こされて判決などを取られていると、債権者から給与が差押えられる可能性があり、その場合は勤務先に借金を滞納している事実が知られてしまいます。そういった場合は、会社に居づらくなって退職せざるを得ない場合も中にはあるようです。

「自己破産をすると債権者が自宅に押しかけてくる」とか、「家財道具にベタベタと差押えの赤紙が張られてしまう」というイメージをお持ちの方も多いですが、実際にはそういうことはありません。
といいますのも、債権者は自己破産の申し立てによって取立行為が禁止されますし、債務者の生活に欠くことができない家財道具は法律により差押えが禁止されているからです。
自己破産による実際の不利益とは?
破産情報が信用情報機関に登録される

一般的にブラックリストといわれているものです。
これにより、破産者本人は当然として、同居の家族がクレジットカードをつくることができず、クレジットを利用することができなくなります。
また、概ね10年ぐらいは、ローン等を組むこともできないと言われています。

しかし、信用情報機関へは3ヶ月ほどの延滞でも登録されるので、長期に延滞している人は自己破産しなくてもすでに登録されている可能性が高いと思われます。
氏名や住所等が官報に掲載されるがアパートやマンションから追い出されることはない
ただ、一般の方が官報を見ることはまずありませんので、破産をしたこと自体知られる心配はあまりないと思います。
また、自己破産をして免責を得ると、その後7年間は自己破産することができなくなります。
アパート・マンションや借家などの賃借人、借地人が自己破産をした場合には、賃貸人から追い出されてしまうのではないかとの不安を抱いている方もいらっしゃると思います。

以前は、破産が賃貸借契約の解除事由になっていましたが、民法の改正によりこの規定は削除されました。よって、現在では自己破産をしても家賃を滞納していない限り、退去させられることはありません。
さまざまな資格が制限される
たとえば、弁護士・司法書士・税理士などの資格を失うことになったり、会社の役員の資格を失うなどです。
また、保険の外交員や証券外交員など、他人の財産を預かり、または管理する業務を一定の資格の下に行っている場合には、自己破産によってその業務を禁止される場合があります。
ただし、この資格制限も免責決定と同時に復権するので、自己破産をしたからといって永久に資格制限がされるわけではありません。
自己破産~同時廃止とは
破産とは,財産のすべてをお金に換えて,各債権者に公平に分配するための手続です。
分配や換価する財産がないときは「同時廃止」
しかし,財産のすべてをお金に換えても換価や分配のための費用にもならない場合には,換価や分配を行わず,破産手続開始決定をすると同時に手続を終えてしまう「同時廃止」という手続となります。
同時廃止の特徴
・破産管財人は選任されない
・破産手続開始決定を受けても財産はそのまま
・破産者としての一定の制約はあるが転居の制限や郵便物の検査等の不利益なし

ただし,場合によっては,財産の換価や債権者への配当をすることもあります。
なお,財産があるのにそれを隠して「同時廃止」を求めると,刑罰を受けることがありますし,免責も許可されません。
破産や同時廃止による債務の支払い責任はどうなるのか
破産手続開始申立てをしたり,「同時廃止」による破産手続開始決定を受けただけでは,債務の支払責任はなくなりません。
債務の支払責任をなくすためには,裁判所から免責許可決定を受け,その決定に誰からも不服が出ない(確定する)ことが必要です。
債務の免責が許可されない場合
免責が不許可となる(免責不許可事由)のは,財産を隠す,特定の債権者だけに返済する,ギャンブルで過大な借金をする,過去7年以内に免責許可決定が確定していた,などの場合です。ただし,免責不許可事由があっても,裁判所が裁量で免責許可決定することができます(裁量免責)。
しかし,債務がギャンブルや遊びのためにできたものであったり,返すあてもないのに偽って借りたものであるなど,場合によっては免責が許可されないこともあります。
そして,破産手続開始申立てから免責許可決定の確定までは,手続が順調に進行し,内容的にも問題がないケースであっても,一般的には4か月から5か月はかかります。
当事務所では、自己破産や個人再生について、数多くの案件を処理した経験と実績があります。
【解決事例】ギャンブルの借金について自己破産が認められた事例
ご相談内容
相談者は30歳代の男性。金融機関などから、約800万円の借金があり、月々の返済が困難な状況に陥っており、自己破産により債務整理をしたいということで相談に来られました。
ただ、借金のうち、400万円近くがギャンブルによるものであり、自己破産の場合、浪費による免責不許可となる可能性もある案件でした。
解決の方針・結果
ギャンブルによる免責不許可事由があるため、管財事件として、異時廃止による破産と裁量免責を目指すことを方針としました。
管財人に対して、破産に至る経緯について丁寧に説明したうえで、反省文を提出するとともに、まじめに働いているなど経済的更生に向けて努力している態度を示すことにより、裁量免責が認められました。
まとめ
破産は,財産を処分して,公平に債権者に配当する手続きです。そのため,原則として法定自由財産以外の財産は換金されて,債権者に公平に配当されます。処分されるのは,自由財産以外の不動産,車,預貯金,保険解約金,99万円を超える現金などです。
自己破産手続の弁護士費用
同時廃止 30万円~(税別)
※管財人が選任されるか否か、債務者が個人か事業者、または法人か、によって費用が変わります。
詳しくは「民事事件の弁護士費用」のページをご覧ください
破産は,債務者の経済生活の再生の機会を図ることを目的にしています。裁判所に破産手続開始の申立てをして,裁判所関与のもとで,債務者の財産を適正かつ公平に清算する手続きです(破産法)。
破産手続きの種類
破産の手続きには,同時廃止事件と管財事件の2種類があります。
同時廃止事件
破産手続開始決定と同時に、廃止決定がなされ,破産手続が終了します。
同時廃止の詳細についてはこのページの下「自己破産~同時廃止とは」で解説しています。
管財事件
裁判所が選任した破産管財人が、破産人(債務者)の財産などの調査,配当などを行った上で,手続きを終了します。債権者に説明をする債権者集会も開かれ,同時廃止と比べると,費用,時間の負担は大きくなります。
破産財団(債務者の財産)で破産手続きの費用が不足する場合は同時廃止が適用されます。調査を要する場合には管財事件となります。いずれになるかは,裁判所が決定します。
自己破産する場合に一番大きな問題かもしれないのが、保証人、特に連帯保証人との関係です(通常、借金の保証人として債権者(金融業者)から求められる保証人は「連帯保証人」ですので、ここでは連帯保証人として説明しています)。
もしも、連帯保証人を付けていた場合、例え債務者(破産申立人)が、「破産手続開始決定」が下り、「免責許可の決定」を受けて、晴れて自己破産手続が終わり、債務(借金)が免除されたとしても、残念ながらそのことは「連帯保証人には影響しません」ので、債権者は今度は保証人に取り立てを行うようになります。
さらに、この場合、破産をした主債務者の滞納により、期限の利益が喪失されていますので、「原則として連帯保証人は一括で債務を返済しなくてはならない」ということになります。
交渉次第では分割払いを認めてくれる場合もありますが、連帯保証人に返済能力がない場合は、残念ながら連帯保証人も自己破産手続を行うか、「任意整理・特定調停・個人民事再生手続き」など、他の債務整理を行わなければならないケースが少なくありません。
以上のことから、連帯保証人に知られずに自己破産することは不可能ですし、迷惑も掛けてしまいますので、自己破産の申立てをする前に、必ず連帯保証人に相談し、最善の方法を話し合うことが大切です。
ご相談内容
相談者は50歳代の男性。経営する会社について、金融機関などから、1億円以上の借金があり、月々の返済が困難な状況に陥っていました。
また、代表者個人についても、会社の連帯保証人になっていることなどから、約1億円の借金がありました。
そこで、会社と代表者個人について、破産により債務整理をしたいということで相談に来られました。
解決の方針・結果
受任後、会社の工場の閉鎖、重機・自動車などの動産の処分、事務所の賃貸借契約の解除や明渡し、従業員の退職手続き、売掛金の回収などを行う一方で、会社に対する債権者の債権調査などを行いました。
また、代表者個人についても、自動車や自宅マンションなどの資産の調査や処分を行う一方で、代表者個人に対する債権者の債権調査などを行いました。
また、自宅マンションは、できれば、そのまま居住したいという意向がありましたので、最終的に、相談者の長男が時価で買い取る形で処分をしました。
受任してから、約4か月後に、裁判所に対して、会社と代表者個人の破産申し立てを行い、管財人の選任、破産開始決定があり、約1年間後に、会社と代表者個人の破産手続きが終了し、代表者個人は免責となりました。
受任後、丁寧かつスピーディに行った結果、会社と代表者個人の破産の案件としては、1年間という比較的早い期間で、破産手続きが終了しました。
当事務所では、会社や個人破産、個人再生について、数多くの案件を処理した経験と実績があります。
会社の代表が自己破産することについては「取締役と自己破産・個人再生」のページで解説しています。