自己破産

借金でお悩みの方、自己破産を検討している方は弁護士に相談することをお勧めします。

返済ができなくなった借金等を整理する「債務整理」の手続きには,大きく分けて,任意整理,破産,再生がありますが、いずれの手続きも,弁護士に依頼した場合は,弁護士が窓口になるので,複雑な交渉や書類の提出等の負担が少なくなります。
また、債権者から債務者への直接の督促も止まります。これは精神的にも安心ですし、大きなメリットです。

<解決事例>神戸山手法律事務所ではギャンブルによる借金でも自己破産を成立させた実績があります。

ご相談内容

一般的に自己破産においては、浪費・ギャンブルによる借金など、免責を認められない場合があります。

件の相談者は30歳代の男性。金融機関などから、約800万円の借金があり、月々の返済が困難な状況に陥っており、自己破産により債務整理をしたいということで相談に来られました。

ただ、借金のうち、400万円近くがギャンブルによるものであり、自己破産の場合、浪費による免責不許可(破産が認められない)となる可能性もある案件でした。

解決の方針・結果

ギャンブルによる免責不許可事由があるため、管財事件として、同時廃止による破産と裁量免責を目指すことを方針としました。

管財人に対して、破産に至る経緯について丁寧に説明したうえで、反省文を提出するとともに、まじめに働いているなど経済的更生に向けて努力している態度を示すことにより、裁量免責が認められました。

自己破産手続の弁護士費用

同時廃止 30万円~(税別)
※管財人が選任されるか否か、債務者が個人か事業者、または法人かによって費用が変わります。

詳しくは「民事事件の弁護士費用」のページをご覧ください

自己破産とは?

不況のため経営していた会社が倒産。事業を継続するために借りた多額の借金がもう返済できそうにない…。

自己破産とは、借金の総額が多く自分の財産や収入では返しきれない場合、裁判所に申し立てることによって、払いきれない借金を法律上免除(「免責」といいます。)してもらう手続きです。

では、この「自己破産」について説明します。

自己破産のメリット・デメリット

「自己破産をする」、または「自己破産をしない」を検討する際にはそれぞれのメリットとデメリットを知ることが重要です。

自己破産のメリット自己破産のデメリット
・免責の決定が出ると、借金の全額(※)について返済する必要がなくなります。

・給料を差し押さえられている場合、差押えを停止することができます。

・債務者は,破産手続開始とともに,借金の支払い義務を免れるための免責許可の申立てを行います。

裁判所が,免責許可決定を行えば,返済はしなくてよくなるのです。これが,個人の自己破産の最大のメリットです。
※滞納している税金、養育費は免除されません

主に浪費・ギャンブルによる借金など、免責を認められない場合があります。

・保証人を立てた借金の場合、保証人に請求が行くことがあり、迷惑をかけてしまうかもしれません。

・破産手続き期間中は、警備員、保険外交員など、一定の職業に就くことはできません。
(ただし、この資格制限も免責決定と同時に復権するので、自己破産をしたからといって永久に資格制限がされるわけではありません。)

・官報、破産者名簿に記載されます。

・一定期間(5~7年)信用情報機関に登録され、あらたに借金をすることができなくなります。
・生活必需品や古い自動車、一定期間の財産はそのまま所有することができます。

(破産によって所有している古い自動車がどうなるか、詳しくは「自己破産と自動車」のページをご覧ください)
・原則として住宅など財産を手放す必要があります。
※家を残し住宅ローンを払い続ける債務整理の方法に「個人再生」があります。
詳しくは「個人再生」のページ、もしくは「個人再生と住宅ローン」をご覧ください。

破産手続きの種類

破産とは,財産のすべてをお金に換えて,各債権者に公平に分配するための手続です。
破産の手続きには,同時廃止事件と管財事件の2種類があります。

同時廃止

同時廃止とは、破産手続開始決定と同時に、廃止決定がなされ,破産手続が終了する手続きです。

分配や換価する財産がないときは「同時廃止」

しかし,財産のすべてをお金に換えても換価や分配のための費用にもならない場合には,換価や分配を行わず,破産手続開始決定をすると同時に手続を終えてしまう「同時廃止」という手続となります。

同時廃止の特徴

・破産管財人は選任されない
・破産手続開始決定を受けても財産はそのまま
・破産者としての一定の制約はあるが転居の制限や郵便物の検査等の不利益なし

ただし,場合によっては,財産の換価や債権者への配当をすることもあります。
なお,財産があるのにそれを隠して「同時廃止」を求めると,刑罰を受けることがありますし,免責も許可されません。

管財事件

裁判所が選任した破産管財人が、破産人(債務者)の財産などの調査,配当などを行った上で,手続きを終了します。債権者に説明をする債権者集会も開かれ,同時廃止と比べると,費用,時間の負担は大きくなります。

管財事件の特徴

  • 裁判所が破産管財人を選任する
  • 債権者に向けて説明集会を開いたりなど、手間も費用もかかる
  • 破産管財人が行う調査に基づいて配当を決め、手続きを行う

同時廃止か管財事件かは裁判所が決定

破産財団(債務者の財産の総称を「破産財団」といいます)で破産手続きの費用が不足する場合は同時廃止が適用されます。
調査を要する場合には管財事件となります。
いずれになるかは,裁判所が決定します。

同時廃止についてもっと詳しく知りたい方は「自己破産~同時廃止とは」のページをご覧ください。

破産が認められるまでにかかる期間

破産手続開始申立てから免責許可決定の確定までは,手続が順調に進行し,内容的にも問題がないケースであっても,一般的には4~5か月はかかります。

破産や同時廃止をすれば借金の返済(債務の支払い)責任は無くなるのか?

ここで注意しなければならないのは、破産手続開始申立てをしたり,「同時廃止」による破産手続開始決定を受けただけでは債務の支払責任はなくならない、ということです。

債務の支払責任をなくすためには,裁判所から免責許可決定を受け,その決定に誰からも不服が出ない(確定する)ことが必要です。

債務の免責が許可されない場合(免責不許可事由)

  • 財産を隠す
  • 特定の債権者だけに返済する
  • ギャンブルで過大な借金をする
  • 過去7年以内に免責許可決定が確定していた

などの場合です。

ただし,免責不許可事由があっても,裁判所が裁量で免責許可決定することができます(裁量免責)

しかし,債務がギャンブルや遊びのためにできたものであったり,返すあてもないのに偽って借りたものであるなど,場合によっては免責が許可されないこともあります。

【参考】破産というしくみの目的

破産は,債務者の経済生活の再生の機会を図ることを目的にしています。裁判所に破産手続開始の申立てをして,裁判所関与のもとで,債務者の財産を適正かつ公平に清算する手続きです(破産法)。

生活に必要な最低限度の財産は処分しなくてもよいことになっています。

法定の「自由財産」は,破産手続開始後に取得した財産(新得財産)衣服や寝具,家具などの生活必需品(差押禁止財産),99万円以下の現金です。

これ以外にも,裁判所が決定で自由財産として取り扱うこともあります(自由財産の拡張)。

自己破産しても手元に残せる財産を自由財産と言います。詳しくは「自己破産と自由財産」をご覧ください

自己破産をすると受ける不利益とは?

さまざまな資格が制限される

では、自己破産によって実際にどんな不利益を被ることになるのかを見ていきましょう。

たとえば、弁護士・司法書士・税理士などの資格を失ったり、会社の役員の資格を失う(会社の役員の自己破産については「取締役と自己破産」)ことはあります。

また、保険の外交員や証券外交員など、他人の財産を預かり、または管理する業務を一定の資格の下に行っている場合には、自己破産によってその業務を禁止される場合があります。

破産情報が信用情報機関に登録される

複数のクレジットカードで多額の買い物をし過ぎた!口座にもお金がまったく無くなってしまって支払いができない。どうしたらいいのだろう…。

一般的にブラックリストといわれているものです。
これにより、破産者本人は当然として、同居の家族がクレジットカードをつくることができず、クレジットを利用することができなくなります。
また、概ね10年ぐらいは、ローン等を組むこともできないと言われています。

しかし、信用情報機関へは3ヶ月ほどの延滞でも登録されるので、長期に延滞している人は自己破産しなくてもすでに登録されている可能性が高いと思われます。

また、自己破産をして免責を得ると、その後7年間は自己破産することができなくなります。

破産に伴う身分・資格の不利益について、もっと詳しく知りたい方は「破産に伴う身分上の不利益について」をご覧ください。

自己破産に関する間違った情報にご注意ください

自己破産についてよくある誤解として

  • 「選挙権がなくなる」
  • 「戸籍に記載される」
  • 「会社を解雇される」

ようなことがよく聞かれますが、そのようなことはありませんので信じないようにしてください。

【参考】自己破産をするとアパートやマンションから追い出される?

アパート・マンションや借家などの賃借人、借地人が自己破産をした場合には、賃貸人から追い出されてしまうのではないかとの不安を抱いている方もいらっしゃると思います。
以前は、破産が賃貸借契約の解除事由になっていましたが、民法の改正によりこの規定は削除されました。よって、現在では自己破産をしても家賃を滞納していない限り、退去させられることはありません。
(ただ、一般の方が官報を見ることはまずありませんので、破産をしたこと自体知られる心配はあまりないと思います)

【参考】自己破産をすると家財道具に赤紙が貼られる?債権者が自宅に押し掛けてくる?

「自己破産をすると債権者が自宅に押しかけてくる」とか、「家財道具にベタベタと差押えの赤紙が張られてしまう」というイメージをお持ちの方も多いですが、実際にはそういうことはありません。

と、いいますのも、債権者は自己破産の申し立てによって取立行為が禁止されますし、債務者の生活に欠くことができない家財道具は法律により差押えが禁止されているからです。

【コラム】自己破産をしても法律上定められていること以外の不利益を受けることはありません。
過労イメージ

このように一般の方は、自己破産に対して非常に暗いイメージを持っているのが通常です。

自己破産をすると戸籍に記載されてしまうのではないか、公民権が剥奪されてしまうのではないか、子供の進学に悪影響が生じるのではないかなど、自己破産に対してマイナスのイメージを持っています。

しかし、自己破産をしても戸籍に記載されることはありませんし、選挙権も被選挙権もなくなりません。もちろん、家族の生活や子供の進学に影響を与えることはありません。

また、自己破産をしても会社を辞める必要はなく、これは公務員であっても同様です。

ただし、すでに裁判を起こされて判決などを取られていると、債権者から給与が差押えられる可能性があり、その場合は勤務先に借金を滞納している事実が知られてしまいます。そういった場合は、会社に居づらくなって退職せざるを得ない場合も中にはあるようです。

自己破産も債務者の経済生活の再生を目的にしているため,生活に必要な最低限度の財産は処分しなくてもよいことになっています。法定の「自由財産」は,破産手続開始後に取得した財産(新得財産),衣服や寝具,家具などの生活必需品(差押禁止財産),99万円以下の現金です。これ以外にも,裁判所が決定で自由財産として取り扱うこともあります(自由財産の拡張)。

破産は,財産を処分して,公平に債権者に配当する手続きです。そのため,原則として法定自由財産以外の財産は換金されて,債権者に公平に配当されます。処分されるのは,自由財産以外の不動産,車,預貯金,保険解約金,99万円を超える現金などです。

自己破産しても手元に残せる財産を自由財産と言います。詳しくは「自己破産と自由財産」をご覧ください

自己破産すると及ぶ連帯保証人への影響について

友人が破産した。彼女の借金の連帯保証人になっていた自分に多額の請求が来た!今は生活に余裕がなく、お金がないので代わりに返済できそうにない…。

自己破産する場合に一番大きな問題かもしれないのが、保証人、特に連帯保証人との関係です(通常、借金の保証人として債権者(金融業者)から求められる保証人は「連帯保証人」ですので、ここでは連帯保証人として説明しています)。

もしも、連帯保証人を付けていた場合、例え債務者(破産申立人)が、「破産手続開始決定」が下り、「免責許可の決定」を受けて、晴れて自己破産手続が終わり、債務(借金)が免除されたとしても、残念ながらそのことは「連帯保証人には影響しません」ので、債権者は今度は保証人に取り立てを行うようになります。

<注意!>連帯保証人には大きな責任が伴います

借金の連帯保証人になってしまった場合の責任の厳しさは「連帯保証人とは」の記事で解説しています。

連帯保証人は債務を一括で返済しなければならない

さらに、この場合、破産をした主債務者の滞納により、期限の利益が喪失されていますので、「原則として連帯保証人は一括で債務を返済しなくてはならない」ということになります。

連帯保証人にも返済能力がないとき

交渉次第では分割払いを認めてくれる場合もありますが、連帯保証人に返済能力がない場合は、残念ながら連帯保証人も自己破産手続を行うか、「任意整理・特定調停・個人民事再生手続き」など、他の債務整理を行わなければならないケースが少なくありません。

以上のことから、連帯保証人に知られずに自己破産することは不可能ですし、迷惑も掛けてしまいますので、自己破産の申立てをする前に、必ず連帯保証人に相談し、最善の方法を話し合うことが大切です。