自己破産について

 事業や生活のためにお金を借りたり,クレジットカードの支払いができなくなったり,連帯保証人になったりなどして,借金を支払えなくなることがあります。今年は,新型コロナウィルス感染予防で4月から外出自粛がなされたために,仕事を失い,やむなく借金をした人もいるでしょう。
 返済ができなくなった借金等を整理する「債務整理」の手続きには,大きく分けて,任意整理,破産,再生があります。
 いずれの手続きも,弁護士に依頼した場合は,弁護士が窓口になるので,複雑な交渉や書類の提出等の負担が少なくなります。債権者から債務者への直接の督促も止まります。
 今回は、自己破産について説明したいと思います。

 破産は,債務者の経済生活の再生の機会を図ることを目的にしています。裁判所に破産手続開始の申立てをして,裁判所関与のもとで,債務者の財産を適正かつ公平に清算する手続きです(破産法)。
 破産の手続きには,同時廃止事件と管財事件の2種類があります。
 同時廃止事件は、破産手続開始決定と同時に、廃止決定がなされ,破産手続が終了します。一方,管財事件は、裁判所が選任した破産管財人が、破産人(債務者)の財産などの調査,配当などを行った上で,手続きを終了します。債権者に説明をする債権者集会も開かれ,同時廃止と比べると,費用,時間の負担は大きくなります。
 破産財団(債務者の財産)で破産手続きの費用が不足する場合は同時廃止になりますが,調査を要する場合には管財事件となります。いずれになるかは,裁判所が決定します。
 
 債務者は,破産手続開始とともに,借金の支払い義務を免れるための免責許可の申立てを行います。裁判所が,免責許可決定を行えば,返済はしなくてよくなるのです。これが,個人の自己破産の最大のメリットです。なお,税金や養育費などは免責されません。
 免責が不許可となる(免責不許可事由)のは,財産を隠す,特定の債権者だけに返済する,ギャンブルで過大な借金をする,過去7年以内に免責許可決定が確定していた,などの場合です。ただし,免責不許可事由があっても,裁判所が裁量で免責許可決定することができます(裁量免責)。
 
 自己破産は債務者の経済生活の再生を目的にしているため,生活に必要な最低限度の財産は処分しなくてもよいことになっています。法定の「自由財産」は,破産手続開始後に取得した財産(新得財産),衣服や寝具,家具などの生活必需品(差押禁止財産),99万円以下の現金です。これ以外にも,裁判所が決定で自由財産として取り扱うこともあります(自由財産の拡張)。
 
 破産は,財産を処分して,公平に債権者に配当する手続きです。そのため,原則として法定自由財産以外の財産は換金されて,債権者に公平に配当されます。処分されるのは,自由財産以外の不動産,車,預貯金,保険解約金,99万円を超える現金などです。
 また,官報に掲載され,信用情報機関に事故情報として登録されます。破産者には,制限される資格や職業もあります。

 借金や破産のことでお悩みの場合は,どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。