債権回収のための第三者からの情報取得手続について
貸金返還請求や交通事故の損害賠償請求などの民事裁判により、「○○万円支払え」という判決が出たとしても、債務者(被告)の保有している財産が不明であると、多大な労力をかけて裁判をしても徒労となってしまうことがあります。
また、調停で養育費の支払いについて、合意した内容について相手方が履行しない場合に、勤務先がわからなければ、給与を差し押さえることはできません。
こうした中で、令和元年の民事執行法改正により、債務者(相手方)の財産を調査する手段として,「財産開示手続」が改正されるととともに、新たに、「第三者からの情報取得手続」が創設されました。
「第三者からの情報取得手続」制度は、債権者が、債務者の不動産に関する情報、預貯金・振替社債等に関する情報(以下「預貯金情報等」といいます。)及び勤務先に関する情報について、それぞれ第三者から情報を取得する手続です。
不動産情報については登記所から、預貯金情報等については銀行及び証券会社等から、勤務先情報については市町村・厚生年金保険の実施機関から取得するものです。
「第三者からの情報取得手続」の要件は、「財産開示手続」と共通しでいる部分が多いですが、この手続を利用するためには、まず、裁判所の判決,和解調書,調停調書,仮執行宣言付支払督促や公証人の強制執行認諾文言付公正証書等の「債務名義」を有する債権者であることが必要です。
そのため、支払督促によっても申立ては可能です。
また、養育費などの支払いの場合は、調停調書があれば、可能ですが、当事者間の合意書ではこの手続きは利用できません。
次に、強制執行における配当又は弁済金交付で完全な弁済を受けられなかったか,知れたる財産に対して強制執行をしても完全な弁済を受けられないことが必要です。
また、特有な要件として、勤務先惰報については、請求債権が「婚姻費用・養育費等に係る請求権、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」であることが必要とされています。
さらに、不動産に関する情報,勤務先に関する情報の情報取得手続申立をするためには,「財産開示手続」を先行させる必要があります。
「第三者からの情報取得手続」は、財産開示手続が実施された場合において、その期日から3年以内に限り申し立てることができます。
ただ、預貯金・振替社債等については、財産開示手続後に処分をすることが容易であるため、財産開示手続を経ずに申し立てることが可能となっています。
金融機関が一定程度絞られているものの、支店名までは把握できないようなケースでは、預貯金情報等の第三者情報取得手続を先行して申し立てることが適切です。
なお、預貯金情報として得られるものは、預貯金債権の存否、預貯金債権を取り扱う店舗、預貯金債権の種別、口座番号及び額であり、出入金履歴は含まれていません。
「第三者からの情報取得手続」によって、債務者の財産や勤務先が判明した場合には、当該財産や給与に対して強制執行を行うことになります。
この制度は、貸金などのほかに、養育費の支払いにも有効であると思われます。
貸金や養育費の未払など法的トラブルでお悩みの場合は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。