控訴について
控訴とは、第一審の判決に対して不服がある場合に、上級の裁判所に対してその判決の確定を遮断して新たな判決を求める不服申立てをいいます。一審判決で負けてしまったら、別の裁判所でもう一度争い判断してもらうことができます。これを控訴と言います。
一審が地方裁判所であれば、二審の控訴審は高等裁判所です。一審が簡易裁判所の場合は、二審の控訴審は地方裁判所になります。(地方裁判所はどの都道府県にもありますが、高等裁判所は、東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島、高松、福岡という大都市にしかありません)
控訴する場合、裁判所に納める印紙代は一審のときの1.5倍となります。
控訴期間と控訴理由書の提出について
控訴は第一審裁判所に対して控訴状を提出して行いますが、その期間は判決書の送達を受けた日から2週間とされています(民訴法285、286Ⅰ)。
一審での判決理由を見て、相手はどういう理由で勝ったのか、一審でこちらが強く主張した部分はどう判断されているのか、一審の判断はおかしくないか、二審で新たな証拠を提出する余地はあるのか、二審で争った場合ひっくり返る見込みはあるのかなどを、弁護士の見通しも踏まえ、控訴するかどうか判断しましょう。
なお、厳密には、期間計算は民法の規定に従いますので、初日は不算入とし末日が土日祝日にあたる場合にはその翌日が満了日となります(民訴法95ⅠⅢ、民法140、141)。
控訴期間を一日でも経過してしまうと、判決は確定してしまいます。
控訴する場合には時間的に余裕を見て、控訴することを依頼しましょう。
控訴理由書の提出
いずれにせよ、この2週間という短い期間に控訴理由を十分に記載した書面を作成するのは困難ですから、控訴理由については「追って控訴理由書を提出する。」とした控訴状をひとまず提出しておくことが通常です。
この場合、今度は控訴の提起後から50日以内に、控訴の理由を記載した書面(いわゆる控訴理由書)を控訴裁判所に提出しなければなりません(民訴規182)。
控訴理由書とは、控訴審において、当事者が第一審判決の取消または変更を求める具体的な理由を記載する書面です。
そして、この50日という期間の定めは訓示規定と解されていて、控訴理由書の提出が遅れたりあるいは提出しなかった場合でも控訴が不適法(却下されてしまう)というものではありません。
これは、上告状に上告の理由の記載がないときにおいて、上告後に裁判所から上告提起通知書の送達を受けた日から50日以内に理由書の提出をしなければならず、これをしない場合には上告が不適法なものとして却下されること(民訴法315ⅠⅡ、316Ⅰ②、民訴規194(上告受理申立の場合も同じ(民訴法318Ⅴ)))と全く異なる扱いです。
このような取り扱いの違いについて、東京地裁判決は、「民訴法は、控訴審について、第1審で収集した訴訟資料に加えて、控訴審で提出されたものも含めて事件(請求)の当否についての判断を行う続審制を採用しており(同法298Ⅰ、296Ⅱ)、民訴規182条の規定は、その中にあって控訴審における争点の早期明確化を趣旨とする規定である。
したがって、控訴理由書の不提出は、その違反自体を理由として上告を却下しなければならないとする規定(民訴法316条Ⅰ)のある上告理由書の場合と異なって、控訴それ自体の効力とは無関係である」としています。
ただ、訓示規定とはいえ、全く無視していいというものではないでしょう。