労災の相談ができる弁護士を探している方へ
労災(労働災害)とは?
私たちが会社や工場で働いているときに、仕事が原因で、ケガや病気になることがあります。
例えば、
高所作業中に転落して大けがをした
工場で作業中に機械に巻き込まれてケガをした
通勤途中に交通事故に遭ってケガをした
上司のパワハラでうつ病になった
仕事が忙しくて過重な労働により脳・心臓疾患を発症して死亡した(過労死)
他の作業員のミスでケガをした。後遺障害を負った
このように、業務に起因するケガ、病気や死亡を「労働災害(労災)」といいます。
労災にあったときのために法律で「労働災害保険(労災保険)」という制度があり、被災労働者は、給付金を請求することができます。
生活習慣病を持つ労働者が長時間残業で倒れた場合も、労災が適用できる?
では、脳梗塞や心筋梗塞で倒れた労働者が、もともと生活習慣病を持っていた場合はどうでしょうか?(職場で倒れたか、自宅で倒れたかを問いません)
発症前の数ヶ月間以上、長時間の残業が続いている中で、脳・心臓疾患を発症した場合には、労災が認められる可能性が十分にあります。
このような場合、多くの方は、もともと持病があったことを理由に、私病として片付けてはいないでしょうか。仮に、高血圧や高脂血症などの生活習慣病を持っていたとしても、それまで通常の生活をしており、発症の主たる要因が長時間残業と認められる場合は、労災と認定されます。
労災の可能性があることに労働者も会社も気づかない
しかし持病を持った労働者が、脳や心臓疾患などで急に倒れた場合、労働者も、会社も「労災にあたる」という発想にはなりにくいのです。
「長時間の残業があったとしても仕事として仕方なかったのだから、健康保険の傷病手当金の支給手続きをして済ませるしかないだろう」
「長時間の残業をするほど、まじめで、仕事が好きだ(自分の意志だった)」
「一緒に働いている同僚たちは病気になっていないのだから、自分の身体に原因があるのだろう」
持病(私病)か?労災か?
このように、日本では一般に労災に関する知識がないため、脳や心臓疾患などで倒れた多くの方が労災ではなく健康保険の傷病手当金の手続きだけで済ませられていることが多いのです。
しかし、脳や心臓疾患などが原因で身体に障害(半身不随など)が残れば仕事ができなくなりますし、一定期間が経過すれば、会社から解雇されてしまいます。
単なる持病(私病)として扱われる場合と、労災として認められる場合では補償内容に雲泥の差があります。
持病(私病)として扱われる | 労災として扱われる | |
適用される給付制度 | 健康保険からの給付 | 労働基準法の「災害補償」労働保険法による「災害補償(保険給付)」 ・国から支給される最低限度補償 ・労働者の過失は問われない |
治療費 | 健康保険で3割を自己負担 | 全額が療養給付として支給される |
支給期間 | 健康保険から傷病手当金として1年6か月 | 療養に必要な期間中 |
支給金額 | 給料の6割が支給される | 給料の8割が支給される |
障害が残った場合 | 障害年金が支給される | ・障害年金 ・労災の災害補償給付 |
解雇 | 会社に病気休暇の制度がない場合は、有給を使い果たすと、療養中であっても解雇される可能性がある。 ↓ 障害が残った場合は退職金をもらって退職せざるを得ない | 療養中は労働者を解雇することは禁止 |
労災の分野において、ぜひ弁護士に相談してほしいことがあります
持病か、労災か、判断できないときは弁護士に相談
これまで書いてきたように、脳・心臓疾患で倒れた労働者が、たとえ持病をもっていたとしても、長時間残業が続いていたのであれば、労災を検討できます。
労働者が自分で判断をするよりも、弁護士に相談しましょう。
会社が労災申請に対して非協力的
会社によっては、労災の発生を元請会社や労働基準監督署などに知られることを嫌がって労災申請手続などに協力しなかったり、労働者だけに責任があるかのように報告したりすることがあります。
また、労災のうち、過重な労働による脳・心臓疾患の発症やパワハラによるうつ病の発症などについて、会社が労災の申請を積極的に行うことはほとんどありません。
身体的、精神的な負担を避けるためにも、このような会社に対し、病気を患った労働者が個人で立ち向かうことはせず、弁護士に相談してください。
会社へ損害賠償、慰謝料の請求をしたい
労災が認定され、長期間入院や通院を余儀なくされてしまった労働者は、後遺障害が残ったとしても、その精神的損害に対する慰謝料 (入・通院の慰謝料、後遺障害の等級に応じた慰謝料、逸失利益など)までは補償されません。
また、会社に落ち度がある場合には損害賠償の請求権が発生しますが、労働者から請求することなく会社から進んで損害を補償してくれることは、まずありません。
このように労災で補償されない範囲に関しては、民事上の損害賠償を請求する必要があります。
損害賠償請求の手続きは専門的な知識が必要となるため、弁護士への依頼なくして進めることはできません。
自殺、脳・心臓疾患による過労死の疑いがある
労働者が過重な労働のあとで、うつ病で自殺したり、心臓や脳疾患で死亡した場合に、遺族の方が過労死ではないかと悩んだりしている場合にも、弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所の弁護士は、理論と実践の両面で、労災問題に精通しています。
- 地方公務員の労災制度において、地方公務員災害補償基金の訴訟担当弁護士を務めていること
- 関西学院大学のロースクールで、労災保険制度を含む社会保障法や行政法の講義を担当していること
- 約20年間にわたって公務員としての勤務経験があること
解決事例
先日、ある会社に勤務していた方が、仕事中に脳出血で倒れて、緊急入院して治療やリハビリを受けましたが高次脳機能障害と左半身麻痺の後遺障害が残りました。
この方は、管理職の方で、脳出血を発症する前の6か月から1年間は、1か月に100時間以上の残業をしていました。
相談を受けてから、まず、勤務先に対して、勤怠管理表の提出を求めるとともに、通勤に利用していたICカードの履歴の開示を求めるなどして、発症前、6か月間の労働時間と時間外労働時間の調査と把握を行いました。
次に、主治医と面談の上、現在の症状や後遺障害について聞き取りを行うとともに、労災の障害給付の診断書の作成を依頼しました。
そのうえで、勤務先の人事担当と面談して、労災申請を行う旨を伝えるとともに、相談者の担当業務や時間外労働の状況などを確認し、労災の申請書類への証明を依頼しました。
そして、申請書類を揃えて、労基署に出向いて労災申請をするとともに、相談者の担当業務の内容や時間外労働の状況などについて、資料を提出して説明を行いました。
これらの結果、相談から約1年2か月、労災申請から約7か月で、労災として認められ、2級の後遺障害の等級認定を受けることとなり、将来にわたって月額30万円程度の障害補償年金などを受給することができるようになりました。
また、その後、勤務先に対して、労災では補償の対象となっていない、慰謝料や逸失利益の請求を行い、約1年間の交渉の結果、勤務先が約1億3千万円の損害賠償金を支払うことで示談しました。
過重労働による脳・心臓疾患の労災が認められるためには、発症が業務による明らかな過重負荷によるものであることを立証する必要があります。
そのため、労災認定を受けるためには、発症前の仕事の内容や時間外労働時間の把握、勤務先や主治医との交渉・調整、労基署への説明などが必要となり、通常の労災申請と比較すると、相当な時間と作業が必要となります。
また、専門的な知識や経験なども欠かすことはできないと思います。
当事務所では、これまで、過重労働による脳・心臓疾患の労災認定について、数多く扱っており、専門的な知識とノウハウを持っています。
コラム1: 厚労省のガイドライン
公的な判断材料として、厚労省からガイドライン(「脳・心臓疾患の労災認定~過労死と労災保険」)が公開されていますが、認定要件や定義が細かく、一般の方々にとっては少々難しい内容です。
コラム2: 労災の申請は本来、労働者がするもの。会社ではありません
労災認定の申請は、会社ではなく、労働者または遺族が労働基準監督署に行う必要があります。
実際には、会社が労働者に代行して手続をするケースが多いですが、あくまでも申請者は労働者であるということには注意が必要です。
したがって、会社が労災申請に協力しない場合には、労働者のみで労働基準監督署に労災認定の申請をすることも可能です。
コラム3: 「あまり大ごとにはしたくない」 でも、会社に落ち度があるのなら、損害賠償を請求することは労働者の当然の権利です。
交通事故で死亡、または後遺障害が残った場合に慰謝料を請求しない人はいませんし、それを請求しても非難されることはありません。
むしろ、当然の権利とさえいえます。これは労災事故でも同じではないでしょうか。
会社の落ち度により、労災事故に遭った場合も、労災保険による給付金及び民事上の損害賠償による補償を受けることは、被災労働者の当然の権利であるといえ、自分や家族の生活のためにも、権利を行使することに躊躇する必要はありません。
コラム4: 労災に慰謝料は含まれないことはあまり知られていません
例えば、被災労働者が労災により死亡した場合は、死亡慰謝料は数千万円、後遺障害が残った場合は、慰謝料は数百万円を超えるケースもあると思われます。
この慰謝料については、労災保険給付の対象とはならないため、被災労働者や遺族が会社に対して別途請求する必要があります。
しかし、被災労働者は、会社側の非協力的な態度や、被災労働者自身がこのような制度などについての十分な知識がないために、特に、会社に対する民事上の損害賠償をすることなく、泣き寝入りしていることが多いのが現状です。