労働者の身だしなみを理由にした解雇
(※労働問題一般についての基本知識ページでは相談から解決までの流れなどを説明しています)
使用者は、業務に適さない髪型や服装等をしている労働者に対してどのような対応をすることができるでしょうか。
まず、身だしなみに関しては、判例上、使用者は、企業が企業秩序の維持のために、企業の円滑な業務上必要かつ合理的な範囲であれば、労働者の髪型・服装等を制限することが許されるとされています。
「服装、髪型を規定した就業規則に違反したら解雇」は通用するか?
就業規則において、髪型・服装等の身だしなみについて定めている場合、その規程に違反した労働者を懲戒解雇することはできるのでしょうか。
裁判所が出した判例とその根拠
この点、判例では、トラックの運転手が頭髪を黄色に染めたことを理由とした解雇を無効としています。
この判例においては、会社側の営業に具体的な悪影響を及ぼしたとはいえず、対外的な影響より社内秩序を念頭にした対応であったといえることや、労働者が一応対外的に目立つ風貌を自制する態度に出ていたにもかかわらず、始末書の提出を求めるなどしており、社内秩序を図るためとはいえ、その合理性、相当性に関する検討をしたうえでなされたものとは認められないと認定されています。
また、男性職員の長髪やひげを不可とする身だしなみ基準に違反したことを理由としてマイナスの人事評価に基づく賃金カットや職務担当に関する差別を行った事案において、裁判例では、このような基準は男性職員の髪型及びひげについて過度の制限を課するというべきで、合理的な制限とは認められず、「顧客に不快感を与えるようなひげ及び長髪は不可とする」との内容に限定して適用されるべきものとしています。
就業規則による一定の制限は出来るが、範囲は限定的
使用者としては、労働者の身だしなみについて制限はできますが、その範囲は限定されるといえます。そして身だしなみを理由に懲戒解雇を行うためには、企業内又は業務遂行上著しい支障を来すおそれがなければできないものと思われます。
また、人事評価や職務担当の転換についても慎重にならざるをえないものと思われます。
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この記事の執筆者:津田 和之 弁護士

神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)
津田弁護士は神戸山手法律事務所を開業する以前は兵庫県庁にて県庁内唯一の法曹資格者として年間500件の法律相談、住民訴訟事件などの重要な訟務案件や行政不服審査法に基づく審査請求などを担当してきたという経歴を持ちます。 津田弁護士の詳細なプロフィールは神戸山手法律事務所TOPページにある「弁護士紹介 津田和之」の項目に掲載しています。
神戸山手法律事務所の津田弁護士は、理論と実践の両面で、労災問題に精通しています。
- 地方公務員の労災制度において、地方公務員災害補償基金の訴訟担当弁護士を務めていること
- 関西学院大学のロースクールで、労災保険制度を含む社会保障法や行政法の講義を担当していること
- 約20年間にわたって公務員としての勤務経験があること



