仕事中の事故を巡る労働者から会社に対する逆求償について

今回は、仕事中の事故を巡って被害者側に損害賠償をした従業員が、勤務先の会社に応分の負担を求めることができるかが争われた事件について、先日出された最高裁の判決を紹介したいと思います。

 

事件の概要は、原告の女性は運送会社のトラック運転手として業務中に死亡事故を起こし、被害者遺族に約1500万円の損害賠償をした。そして、原告の女性が、運送会社に賠償額と同等の支払いを求めていたというものです。
会社が被害者に賠償した後で従業員に負担を求める「求償権」はあるが、今回は逆の構図として「逆求償権」があるかが争点でした。

 

この点について、最高裁は、「従業員は会社に対し、損害の公平な分担という観点から相当と認められる額を請求できる」との初めての判断を下しました。

 

民法715条は、被用者(従業員など)が仕事で第三者に損害を与えた場合、使用者(会社など)も賠償責任を負う「使用者責任」を定めています。
これは、従業員の活動で利益を得ている以上、そこから生じた損害についても責任を負うべきだとの考え方に基づくものです。

 

最高裁は、判決で「715条の趣旨からすれば、使用者は第三者に対する賠償義務だけでなく、被用者との関係でも損害を負担する場合がある」と判断し、どちらが先に被害者に賠償したかによって、会社の負担の大きさが異なるのは相当でないと結論づけました。

 

そして、「本来は従業員が全額の賠償責任を負うべきだ」との考え方から逆求償を認めず、原告側の敗訴とした高裁判決を破棄して、負担額算定のため審理を高裁に差し戻しました。

 

この判決は、業務中のトラブルによる損害について労使間の責任分担のあり方を整理した司法判断で、今後の損害賠償実務に一定の影響を与えるものと予想されます。

 

労働トラブルなどでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

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この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)