タクシー運転手の残業代について

タクシー運転手の残業代を巡る裁判について、先日、最高裁で判決がありました。

この事件では、タクシー会社から、運転手に対し、基本給や残業代のほか、売上高に応じた歩合給が支払われていました。

しかし、歩合給を計算するとき、残業代相当額などが差し引かれ、「実質残業代ゼロ」の状態になっていました。

つまり、この会社では、残業代が増えると、それに合わせて歩合給が減って結局、同じ額の給与となる仕組みの規則を導入していました。

こうした中で、運転手らは、こうした規則は労働基準法に違反するとして、残業代の支払いを求めたのが、今回の訴訟です。

高裁判決では、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が出ていることなどから、制度を合法としていました。

これに対して、今回最高裁は、「労働基準法で時間外労働に割増賃金の支払いが義務づけられているのは、会社側に労働時間の規定を守らせる趣旨があると考えられる。タクシー会社の仕組みは労働基準法の趣旨に沿うとは言い難い」と指摘しました。

そのうえで、運転手らの敗訴とした高裁判決を取り消し、東京高裁で未払い賃金の額を審理するよう命じました。

労基法37条では、残業代計算のベースとなる「通常の労働時間の賃金」と「割増賃金(残業代)」を判別できることが求められています。

今回のようなタクシー会社の制度では、残業代の中に歩合給(通常の労働時間の賃金)が相当程度含まれていることになるため、判別ができないとして、残業代が払われたことにはならないと判断したものと思われます。

タクシー会社では、これまで同様の制度が、業界内で取り入れられていたようですので、この最高裁の判決を受けて制度の見直しを迫られることになると思います。

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