時間外労働によるうつ病の発症と労災について
労働者が長時間の時間外残業が続いて、うつ病を発症した場合に、労災として認められるのでしょうか。
うつ病などの精神障害は、外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのストレス)とそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。
うつ病などの精神障害の発病が仕事による強いストレスによるものと判断された場合に、労災認定されることとなります。
そして、医学的には、長時間労働に従事することも、仕事上の強いストレスとして、うつ病などの精神障害発症の原因となり得るとされています。
長時間の時間外労働が続いて、うつ病を発症した場合に、仕事による強いストレスと判断されるのは、どのようなケースでしょうか。
この点について、厚生労働省の基準では、時間外労働が仕事による強いストレスと判断されるケースとして、3つ挙げています。
- 発症直前の1か月におおむね160時間以上、または発症直前の3週間前におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
- 発症直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間以上、または発症直前の3か月間連続しておおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
- 仕事上、ストレスが発生する他の出来事(転勤による新たな仕事の従事など)と関連して恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)を行った場合
上記1~3に当てはまるケースの場合には、うつ病などの精神障害の発症が、仕事による強いストレスと評価されることとなります。
令和3年7月16日に厚生労働省の専門家の報告書がまとめられ、約20年ぶりに、認定基準の改正が行われました。以下の記事で解説しています。
ただ、注意しないといけないのは、上記➀~➂に当てはまるような仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が強いと評価された場合でも、同時に私生活でのストレス(業務以外の心理的負荷)が強かったり、その人の既往症やアルコール依存など(個体側要因)が関係している場合には、どれが発症の原因なのか医学的に慎重に判断されることとなります。
生活習慣病を持っていた労働者が仕事中に脳梗塞で倒れた場合の労災認定については以下の記事をご覧ください。