勤怠不良と普通解雇

労働者は、雇用契約に基づき、使用者の指揮監督に従って労務を提供すべき義務があります。
就業規則等で定められた始業時間から就業時間までの全部または一部において労務を提供しない場合には、雇用契約上の債務不履行となり、普通解雇事由に該当する可能性はあります。
労働者の勤務態度が不良な場合に、使用者がその労働者を解雇することができるかについて考えてみたいと思います。
一般に、多くの企業では、就業規則において、「勤務態度が不良」を解雇事由として定めていることが多いと思われます。
問題は、その就業規則に規定に基づいて勤務態度が不良な労働者を解雇できるかということです。
裁判例では、労働者が出退勤時間を守らず、行き先や所要時間を告げずに外出したり、内容の説明もせず物品購入や接待の代金を請求したりした事案において、次のとおり判示しています。
「行状の数々は、その一つ一つを個別に取り上げる限り必ずしも重大な不都合といえないものの、これを全体として見た場合、組織として活動している会社にとって看過することのできない事柄である」として「仕事の能力が甚だ著しく劣るか、又は著しく職務に怠慢で担当業務をはたし得ないと認めたとき」に該当するというべき
として、解雇を有効としています。
このように、勤務不良で解雇が有効となるためには、労働者の勤務不良の積み重ねがなければ、解雇できないものと思われます。
多数回の遅刻や欠勤が繰り返されて初めて解雇事由が認められる

しかし、数回遅刻や欠勤があったとしても、他の日には適切に就労していれば、普通解雇事由に該当する程度の債務不履行(労務を提供していない)状態とまでは言えない場合もあります。
解雇権の濫用と認定されるまでに検討される事項
解雇権濫用にあたるかどうかについては、
- 勤怠不良の回数・程度・期間・態様
- 欠勤の理由
- 職務に及ぼした影響
- 注意指導の内容回数等と該当従業員の改善の見込み
- 注意指導に対する対応
- 当該労働者の過去の勤務成績等
…などを考慮して、解雇が妥当といえるかどうかという観点から判断されることになります。
特に、使用者が、労働者に対してその都度注意していたかどうかという点が重要になります。
解雇事由に該当すること及び解雇権濫用でないことについては、使用者側が立証責任を負担することになります。
具体的には、タイムカード、注意指導の具体的な内容、回数について、労働者側の対応の内容等について、客観的な資料を保存しておくことが重要です。
使用者としては、労働者の勤務不良については、その都度、注意や指導を行い、その記録を保管して労働者の勤務不良の状況を明らかにできるようにしておくことも大切でしょう。