遺言を残した方が良いケース⑬~⑭

遺言書を残した方が良いケースとして,⑬「行方不明の相続人がいる場合」があります。
 
遺産分割協議は、相続人が1人でも欠けていると行うことができません。
預貯金の引き出しなどは相続人全員の同意が必要ですから、所在がわからなく連絡が取れない相続人がいると、引き出しが認められなくなる事態が発生します。
 
しかし、遺言によって相続分指定および遺言執行者を指定すれば、遺産分割協議は不要となり、遺言執行者が相続人に代わって遺言どおりんに手続を進めてくれます。
 
所在が不明な相続人がいても、預貯金の引き出しや登記手続きを行うことができるのです。

次に,⑭「可愛がっているペットの世話が心配な場合」があります。
 
ペットは、法律上、“物”として扱われるので財産を相続することはできません。
ただし、遺言によって、特定の人に義務として「ペットの世話」を果たしてもらう代わりに財産を贈与(遺贈)することはできます。
 
「負担付き贈与」と言い、要件は以下の3点です。
1 受遺者に事前の承諾を得ておくこと
2 負担は遺贈する財産の範囲内であること
3 遺言執行者を選任しておくこと
 
負担付き贈与は放棄できるため、受遺者が拒否することが考えられます。
そのため、事前に確認していた方がよいでしょう。
 
負担の範囲は、遺贈を受けた財産の価格の範囲内に限られますので、ペットの世話にかかる費用を見通した上で、遺贈を考える必要があります。
 
また、受遺者がちゃんと任務を果たしてくれるかどうかが心配ならば、監視役として遺言執行者を指定しておくと安心です。

この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)