退職勧奨とその限界
近年の不況の中で、労働者を減らして人件費をカットしたい反面、整理解雇は要件が難しいため、使用者が労働者に対して退職勧奨を行う例が増えています。
労働者を守るため条件が厳しく設定されている「整理解雇」については下記の記事で詳しく解説しています。
ただ、このような退職勧奨が行き過ぎて、強制にわたるという問題も多く生じています。
退職勧奨とは?
退職勧奨とは、使用者が、労働者に対し、自発的に労働契約を終了させる意思表示をするように説得する行為をいいます。
具体的には、
- 使用者が労働者に対し、自主退職するよう説得すること
- 使用者からの合意退職の申込に対して、労働者に承諾をするよう説得をすること
…をいいます。
退職勧奨は、労働者に対し、自発的に退職の意思表示をするように促すものですので、判例は、その法的性質について、単なる事実行為であるとしています。
したがって、使用者は自由に退職勧奨を行うことができ、労働者に退職の意思がない場合にはこれを拒むことができるということになります。
そして、退職勧奨は、あくまで労働者に自発的に退職するよう促すものであるため、その方法は労働者の自由な意思決定を妨げるようなものであってはなりません。
そのため、使用者は、
- 退職勧奨、勧奨の方法等が相手の意に反するまでの過度にわたるもの
- 不当な心理的圧迫を加えるもの
- 不当な不利益を与えるもの
…になっていないかに注意し、退職勧奨の限界を超えないようにしなければなりません。
退職勧奨もその方法が違法である等退職勧奨の限界を超える場合には、不法行為となり、会社や実際に行為を行った使用者が損害賠償責任を負うこともあります。
また、退職勧奨の限界を超えた退職勧奨を受けて、退職の意思表示をした場合には、その意思表示を取り消すことができたり、その意思表示自体が無効となることもあります。