離婚と住宅ローン②~オーバーローンの場合
今回は、離婚時に、ローンが残っている住宅が、ローン残額が住宅の価値を超えており、いわゆるオーバーローン(住宅を売却してもローンが残ってしまう状態)のケースについて解説したいと思います。
Ⅱ 住宅の価値 < ローン残額 の場合
たとえば、自宅をいま売却すると1000万円で売れるけれども、ローン残額が2000万円あるという場合です。これがオーバーローンという状態です。
この場合、財産分与の判断では、この自宅に経済的価値がないと判断されます。
なぜなら、いま売却してもすべて銀行にローンとして代金を持って行かれてしまい、手元には全くお金が残らないからです。
つまり、まだ自宅は自分たちの財産になっていない、ということです。
この状態で、自宅を手放す場合を考えてみます。
自宅を売却した場合、売値は1000万円になりますが、ローンが1500万円ありますので、その代金はすべてローン返済にあてられるのが通常です。そうすると、自宅を売ってもまだ500万円のローンが残ります。
なお、この場合に、残っているローンをどうするか、という問題は財産分与の問題ではありません。
借金については、財産分与の対象とならず、各自がそのまま責任を負うということになります。
ですので、ローンを組んだ名義人や、保証人は、そのまま責任を負うということです。
この場合、離婚したから半分にしてほしいとか、保証人から外してほしいとかいうことも基本的にはできません。
したがって、離婚後はどちらが支払っていくかを協議したり、あるいは、支払えないため破産などの方法で解決するかを検討することになります。
反対に、自宅を維持する場合を考えてみましょう。
夫が自宅に残り、妻が出て行く場合を考えます。
この場合も、住宅には価値がないことになりますので、財産分与の対象とはなりません。
そのため、さきほどの場合と同様、夫婦間でお金のやり取りはなく、ローンや保証人もそのまま、ということになります。
ただ、この場合、夫は自分が住む住宅のローンを払うのに対し、妻にはメリットがないまま、ローンの支払義務が残るというのは不公平な感じがします。
そこで、このような場合、保証人から抜ける方法をとるのが通常でしょう。
もちろん、結果的に保証人から抜けられないケースもありますが、できる限り、この点について協議を行っていくことになります。
以上が、ローンつき住宅がある場合の解決法です。
なお、もともと夫婦が2分の1ずつ共有名義であった自宅を、離婚後もそのままにしておくケースも見かけます。
しかし、共有名義のままにしておくと、いずれこの自宅を売却する際に両方の同意が必要になってしまい、トラブルが生じるおそれがあります。
そのため、いまは困らないからといってそのままにしておくのではなく、不動産の名義はどちらか1人のものにしておく方が良いでしょう。