借地契約と建物の増改築禁止特約について
今日は、借地上の建物についての増改築について考えてみたいと思います。
まず、基本的には、建物所有目的で借地契約をした場合、契約の範囲内であればどのような建物を建てるかは自由です。
これと同様に、その後増改築をする場合にも、原則として契約の範囲内であれば自由に行うことができます。
しかしながら借地契約に「増改築禁止」特約がつけられていることがあります。
これは建物の増改築によって法律上借地期間が延長されたり、底地の価格に影響を及ぼしたりすることがあるため、地主にとって不利益になる可能性があることから、特にそのような制限をもうけたものです。
このような特約がある場合には、基本的には地主の承諾を得なければなりません。では地主の承諾なしに借地人が勝手に増改築してしまった場合はどうなるのでしょうか。
この点、地主が無断増改築を理由に借地契約を解除したケースにおいて、最高裁判所昭和41年4月21日判決は、「増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、借地人に対する信頼関係を破壊するおそれがないときは、地主は特約に基づく解除はできない。」として、借地人を救済しました。
しかし反対にいうと、増改築が地主に著しい影響を及ぼす場合は借地契約が解除されるということであり、実際に契約解除を認めた判例もあります(東京地方裁判所昭和36年6月9日判決)。
このように見てくると、増改築禁止特約がある場合はもちろん、そのような特約がない場合にも、地主にきちんと説明して承諾を得た方がよいということになります。
これに対して、どうしても地主の承諾が得られないという場合もあります。そのような場合には「増改築許可の裁判」という方法があります。
これは「増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」(借地借家法17条2項、借地法8条ノ2)との規定に基づくものであり、「借地非訟」と呼ばれているものです。
そして、この裁判所の許可があれば、地主の承諾がなくても、適法に増改築をすることができます。
ただ、裁判所は許可する場合、地代の増額、承諾料等の付随措置を併用して当事者間の利益の調整を図っており、承諾料は更地価格の数%が一般と言われています。
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