行方不明の建物賃借人(借家人)への対応について(建物の明け渡し)

マンションなどの建物の賃借人が、家賃を滞納したまま行方不明になった場合に、どのように対応するのが良いのでしょうか。

前回、行方不明の賃借人との賃貸借契約を解除について説明しました。
今回は、建物内に残っている動産の処分を含めて、建物明渡しについて説明したいと思います。

契約が解除された後、建物内に動産が残っている場合には、勝手に処分することはできません。

このような場合は、行方不明の賃借人に対して、未払賃料の請求と建物の明け渡しを求める訴訟を提起したうえで、強制執行の申立てをする必要があります。

 (1) 建物明渡請求訴訟の提起

 賃貸借契約が公示の方法により有効に解除された後は、借家人に対する建物明渡請求訴訟を提起し、判決を得て強制執行手続により賃貸建物の占有を回復することになります。訴状には建物の明渡しと未払賃料の支払を求める旨を記載します。

 訴訟手続は訴状が相手方に到達しない限り開始することができませんので、訴訟提起は公示送達の方法で行うことになります。

 (2) 公示送達手続

 公示送達とは、送達を受けるべき者(行方不明の賃借人)の住所、居所、送達すべき場所のいずれも不明な場合に行われるものであり、送達すべき書類(建物明渡等請求の訴状)を裁判所書記官が保管し、いつでも送達を受けるべき者が出頭すれば交付する旨を裁判所の掲示場に掲示することによって行われます。賃貸人は、裁判所に対して、訴状とともに公示送達を求める申立てを行い、掲示がなされてから2週間を経過することによってその効力を生じます(民事訴訟法 112条1項)。これにより訴状が相手方に到達したものとされ、いよいよ訴訟手続が開始します。

 (3) 公示送達効力発生後の口頭弁論期日

 このようにして第1回の口頭弁論手続が開かれますが、行方不明の相手方が出頭してくることはまれです。相手方が欠席すると訴状に記載した内容はすべて自白したものとみなされ、通常は2週間程度で建物明渡しと未払賃料の支払を命ずる判決が下されます。

 このように相手方が所在不明であっても、建物明渡しの手続を行うことは可能です。

 相手が行方不明だからといって、強引に処分などをした場合は、後日、損害賠償請求をされる恐れがあるので、きちんとした法的手続きを取ることが大切です。

 賃貸借契約など不動産のトラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

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