交通事故における家族の損害について

交通事故に遭った場合,被害者本人だけでなく,家族にも様々な影響を受けたり,損害を被ることがあります。

例えば、親族が交通事故で死亡した場合の慰謝料,入院に家族が付き添った場合の付添看護費,入院患者を見舞った場合の交通費などがあります。

 

今回は,このような交通事故の被害者の家族に対する損害賠償について,考えてみたいと思います。

まず,交通事故の「損害賠償請求権」は,被害を受けた本人に認められるものであり,通常は、家族であっても,被害者本人ではない方に,「損害賠償請求権」が発生することはありません。

 

例外として,家族自身の損害として,①家族の被害分を、本人の損害賠償請求権に上乗せできる場合,②家族固有の損害として、家族自身が損害賠償請求できる場合の、2つのパターンがあります。

ただし,②は例外的です。

 

以下で,代表的な問題について説明します。

 

1 入院の付き添い

交通事故に遭った被害者が入院中、家族が付き添った場合。
このような場合、被害者本人の損害賠償請求権に「(家族の)付添費」を上乗せで認められる場合があります。
ただし、付き添った全日分が認定されるとは限らず、付添いが必要な時期・程度が問題となる場合もあります。
また、入院先への交通費についても、上乗せできる場合があります。

 

2 通院の付き添い

交通事故に遭った本人の通院に、家族が付き添ったり、送迎した場合。
このような場合、原則として、「(家族の)付添費」は認められません。
ただし例外として,被害者本人のケガが重い場合、幼児・児童の場合には、被害者の賠償請求権に上乗せできることがあります。
その場合に,仕事を休んだ分の休業補償まで請求できるかというと、理屈上は可能性がありますが、実際の交渉ではなかなか難しいです。
なお,付添いの交通費についても、上乗せできる場合があります。

 

3 移動・宿泊の費用

被害者が遠隔地で交通事故に遭ったとき、家族が、遠隔地の病院に行ったり、付添いや諸々の手続・対応のために宿泊したことの費用。
このような費用も、被害者の状況次第では、一定程度、被害者の損害賠償請求権に上乗せできる場合があります。
ただし、客観的な必要性がさほどない場合は、上乗せできません。

 

4 固有の慰謝料

これは,上記1~3とは異なり,家族固有の損害を,家族の名前で請求するケースです。
交通事故で被害者が死亡したとき、もしくは、高度後遺障害の状態になったときに、被害者の慰謝料の他に、家族固有の慰謝料を請求できる場合があります。
ただ、示談交渉ではなかなか難しくという面と,家族というだけで当然に認められるわけでもなく,一般的には,被害者の慰謝料としてトータルで評価され、合計額が相場を超えないことが多いようです。

 

上記のような被害者の家族の被った損害については,被害者やその家族が保険会社の担当者と交渉しても認められる可能性は低く,専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

 

 

交通事故の被害に遭って,お悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

 

この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)