内縁の妻と相続

内縁関係とは、婚姻届は出していないが、事実上婚姻状態と同様の状態にある関係のことを指します。

例えば、本妻が死亡して、子供も成人したのちに、内縁関係にある女性と数十年にわたって生活をしていた場合に、夫が死亡した場合に、内縁の妻は夫の財産を相続できるのでしょうか。
 
このような場合には、本妻は死亡していることから、内縁の妻に相続権を認めても支障がないようにも思えます。
また、内縁の場合、婚姻に準ずるものとして、できる限り婚姻の法的効果を及ぼそうというのが判例の傾向であり、婚姻費用の分担義務や、離婚時の財産分与義務などは、内縁関係にも準用が認められています。
 
しかしながら、判例は、内縁の妻の相続権は認めていません。
相続人となる者は明確に判断できる必要があることが、その理由のひとつとしてあげられています。
 
では、内縁関係にあった夫が死亡した場合、内縁の妻が夫の財産を取得できる方法としては、 どのようなものが考えられるでしょうか。
 
まず、夫が生存中であれば、遺言を書いてもらう方法が考えられます。
この場合、遺言の内容を相続人の遺留分(一定の法定相続人に対して最低限度の取り分を保障する制度のことです)を侵害しないものとしておけば、後日のトラブル発生を未然に防止できるでしょう。
 
ただ、遺言は書き直すこともできるため、より確実な方法としては、夫と内縁の妻との間で死因贈与契約を締結し、それを公正証書にしておくこと、また不動産の場合は、公正証書による死因贈与契約とともに、死因贈与を原因とする所有権移転の仮登記をしておくことであり、こうしておけば、万全だと思います。
 
次に、夫が既に死亡している場合であっても、夫の相続人となる者が誰もいなければ、内縁の妻は特別縁故者として財産分与を請求できる可能性があります。
 
特別縁故者とは、(1)被相続人と生計を同じくしていた者、(2)被相続人の療養看護に努めた者、(3)その他被相続人と特別の縁故があった者-のいずれかに該当する場合のことをいいます(民法958条の3)。
内縁の妻は、通常、(1)に相当し、特別縁故者にあたる可能性が高いと思われます。
 
以上、内縁の妻には相続権はありませんが、一定の場合に夫の財産を取得できる余地は残されていることになります。

ただ、特別縁故者としての請求手続きにはかなりの時間と手間を要することを考えると、生前贈与や生前に遺言を書いてもらっておくことなどがより簡便な方法と言えるでしょう。