子どもの逸失利益の男女格差

交通事故などで子どもに後遺障害が残った場合には,その後遺障害の等級に応じて将来の逸失利益が損が賠償の対象となります。
 
そして,子どもは,事故前の収入がありませんので,その逸失利益の算定は賃金センサスを用いることになります
ただ,その場合に,賃金センサスでは,男性と女性では平均賃金の金額が違っているため,男の子と女の子では賠償される逸失利益に差が生まれるのかという問題があります。
 
今回はこの問題について考えてみたいと思います。
 
平成22年賃金センサスの全年齢学歴計平均賃金は、男子が523万2000円・女子が345万9400円・男女計が466万7200円です。
 
この数字をそのまま逸失利益の算定にあてはめると、例えば、クルマに男の子と女の子が一緒に乗っていて、交通事故で亡くなったり同じ後遺障害が残っているときも、男女間格差が歴然とした数値で現れることになります。
 
この問題についての 現時点で最高裁のスタンスは、賃金センサスで男女間に平均賃金の格差が現れている事実は、現実の労働市場における実態を反映しているのだから、差が出るのはやむをえないという立場です。
 
ただ,この判例については,性による差別や女性の社会進出という点から多くの批判があります。
 
そこで、下級審では,女子の『年少者』については、将来選択できる職種領域の多様性を反映させて、女子のみの平均賃金でなく、男女計の平均賃金を採用する傾向が見受けられます。
 
ここでいう『年少者』の範囲については、少なくとも義務教育を受けている間はこれに含めてよいと考えるのが、いまの裁判実務の傾向のようです。
 
ただ,他方で,『年少者』女子についても女子と男子の異なった基礎収入をそのまま採用しても問題なしという裁判例が今なお存在しているのも事実です。
 
そういう点では,この論点はいまだ最高裁で完全決着ついていない問題の一つといえるでしょう。
 

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

LINEからのお問い合わせも受け付けております。

QRコード

1) 左のQRコードを読み取るか、
2)「@955nykpk」で検索し、友達追加して下さい。
 友だち追加後、自動あいさつメッセージが届きますので、内容をご確認後、ご返信ください。

この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)