警察署による被害届の受理拒否

最近の新聞において、大津市で昨年10月、中学2年の男子生徒がマンションから飛び降り自殺した問題で、生徒が同級生から暴行を受けていた事実があるとして、父親が昨年末にかけ3回にわたり警察に被害届を提出しようとしたが、大津署から受理を拒否されていたという報道がありました。

男子生徒の父親は、複数の同級生から独自に聞き取った暴行の証言と学校の調査結果を基に、生徒が自殺した後の昨年10月に2回、同12月に1回、大津署に出向き、暴行容疑の被害届を提出したいと申し出たという。しかし、対応した警察署員は「犯罪としての事実認定ができない」として受理を断ったということらしいです。

今日は、被害届とはどういう法的性質を有しているのか、また警察はこれを受理する義務があるのかについて考えたいと思います。

まず、「被害届」とは、文字通り被害を受けた人の警察への届け出です。

ただ、意外に思われるかもしれませんが、被害届には、法的な規定はなく、国家公安委員会規則の「犯罪捜査規範」に「被害届の受理」という項目があるに過ぎません。

そして、犯罪捜査規範では、61条で、被害届の受理について、警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならないと規定し、警察官の受理義務を定めています。

ただ、この規定は、警察官に対する職務上の義務を定めた内部規則にすぎませんので、この規定に違反した警察官が内部的に処分を受けることはあるかもしれませんが、この規定を根拠にして、国民が「被害届」の受理を求めることはできないと思われます。

また、行政手続法では、届出は、37条は事務所に到達したときに届出の手続き上の義務が履行されたと規定されています。

この規定によれば、受理・不受理という概念はなく、この規定が適用されれば、被害届について警察署は受理しないという対応はできず、警察署に提出すれば効力が生じることになります。

ただ、行政手続法は、刑事手続には適用されませんので、ここでも警察には受理する義務はありません。

そうすると、現行法上、警察は、被害届を受理する法的な義務はなく、逆に言えば、国民の側に警察に対して被害届の受理を求める法的な権利もないといわざるをえません。

さらに言えば、被害届の取り扱いについて、明文の規定はないため、警察は、被害届を受理すると、警察は捜査を始めますが、警察本部への報告義務はないし、署長決裁もいらず、担当課長の判断で捜査することが多いようです。

このように被害届は、そもそも受理してもらえない場合も多々ありますし、また、受理されても無視される場合もあります。

捜査の不手際や怠慢は、被害届だと「担当課内の話」で済んでしまう可能性さえあります。

その点が、刑事訴訟法に根拠のある告訴や告発と異なります。

したがって、警察が被害届の受理を拒んだ場合は、捜査義務のある告訴状などの提出を検討した方がいいと思われます。