養子縁組と相続について

相続税を軽減するために、自分の孫などを養子にするという方法があると言われています。

今回は、養子縁組と相続との関係について考えてみたいと思います。

まず、養子縁組とは、親子関係のない者同士を、法律上、親子関係があるものとすることです。 養子には、民法上、「普通養子」と「特別養子」があります。

このうち、普通養子は、実親その親子関係を存続したまま、養親とも親子関係を作るものになります。 わかりやすい例では、娘の配偶者を養子とする「婿養子」があります。

養子縁組を行った場合には、戸籍上に「養子」「養女」として記載され、記録が残ります。

これに対して、特別養子は、戸籍上、実親との関係を断ち切り、完全に養子は養親のみとの親子関係になる養子縁組制度です。

特別養子となると、養親が養子を実子として扱うこととなり、戸籍上の記載も、「実子」と記載がされます。

次に、養親の相続において、養子は、実子と同じように相続人になれますし、民法における法定相続分は、実子と全く同じです。

そして、法律上、養子が数人いる場合でも、相続人になれる養子の人数に制限はありません。

他方で、相続税法では、相続人としてカウントできる養子の数には上限があります。

すなわち、被相続に実子がいれば、養子は1人まで、被相続人に実子がいなければ、養子は2人までとされています。

なぜ、相続税の計算において、このような制度が設けられたのかといいますと、相続税の計算においては、相続財産の総額から3000万円+600万円×法定相続人の数を「基礎控除額」として控除します。

つまり、相続人の数が増えると、自動的に基礎控除額が増えるというわけです。

そこで、養子縁組を利用した節税対策を防ぐために、税法上は、このような上限が設けられているわけです。

しかし、相続税を軽減することを目的とするような養子縁組がそもそも民法上有効かという問題があります。

この点について、先日、最高裁で、相続税の節税を目的にした養子縁組が有効かが争われた判決がありました。   最高裁は、「相続税節税という動機と養子縁組に必要な『縁組の意思』は併存し得る」と指摘したうえで、今回は「縁組の意思がないことをうかがわせる事情はない」と判断して縁組を有効として、無効とした2審・東京高裁判決を破棄する判決を言い渡しました。

この判例に照らせば、専ら相続税節税の目的で、「縁組の意思」がないような場合を除いては、相続税節税目的の養子縁組は有効と認められたと思われます。

最後に、養子縁組をした場合、実親との相続はどうなるのでしょうか。

これは、養子縁組の種類によって、扱いが異なります。

普通養子縁組の場合は、実親との関係は存続したまま、養親の養子となりますので、実親の相続が発生した場合には相続人となります。

また、養親の相続が発生した場合も、養子は相続人となり、実親と養親2組の親の相続権を持つことになるのです。

これに対して、特別養子縁組の場合には、実親との親子関係は断ち切られることになりますので、養親の相続の時にのみ、相続人になります。