住民訴訟の賠償限度額に関する地方自治法の改正案について

先日、新聞記事で、総務省が、自治体の公金支出をめぐる住民訴訟制度で、首長や職員に過大な賠償責任が課されるケースがあることを踏まえ、個人の過失が軽い場合には賠償の限度額を設定できる規定を設ける地方自治法の改正案を、開会中の通常国会への提出を目指すとの報道がありました。

 公金支出をめぐる住民訴訟制度は、首長らが違法な公金支出で損害を与えた場合、住民が自治体を被告として、首長個人に対して損害賠償請求をすることを求める訴えを提起できる仕組みです。

 

 ただ、自治体が敗訴して、首長の責任が認められると、軽過失であったとしても、首長個人では支払い困難な高額の賠償を求められる場合もあることが問題となっていました。

 そして、このような過度に過酷な個人責任について、議会による債権放棄によりこれを制限する動きが出る一方で、このような動きに対しては、住民訴訟制度の趣旨を否定するものであるとの批判もありました。

 議会による債権放棄については、最高裁が議会に広い裁量を認めることで一応決着したものの、首長の賠償額の制限など立法的な解決を図るべきという声が強く出ていました。

そうした中で、昨年の政府の地方制度調査会の答申では、個人の過失が軽い場合の賠償追及に関し、法改正により見直すよう求めていました。

今回の改正案は、これを受けて、民間企業の取締役について賠償に上限を設けられる会社法の規定(代表取締役は報酬6か月分、取締役は報酬4か月分)などを参考に、限度額の設定を検討するものです。

なお、具体額は各自治体が条例で定めることになる見通しとされていますが、故意や重過失の場合は従来通り、限度額は設けないとのことのようです。

私は、数億円を超えるような過度に過酷な個人責任を追及する現在の制度には問題があると考えており、軽過失の場合には賠償額の上限を設けるか、軽減できる制度を設けるべきだと考えていました。

したがって、この改正案には基本的には賛成です。

自治体において住民訴訟や行政訴訟について精通している弁護士を探しておられる場合には、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)