「離婚に伴う慰謝料」について

離婚に伴う慰謝料とは

夫又は妻の一方が破たん原因を作って離婚する場合,その原因を作出した夫(又は妻)は,他方に対し,離婚することに対する慰謝料を支払う必要があります。

これが離婚に伴う慰謝料です。

その法的性質は,不法行為に基づく損害賠償(民法709条)です。

離婚に伴う慰謝料の発生原因には,

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄(生活費の不支給のほか,一方的に家を出てしまい,音信不通の状態となることなど)
  • 暴力暴言等

があります。

しかし,夫婦が婚姻生活を続ける中で,次第に互いに意思疎通を欠いて別居するに至り,それが長期化したような場合には,一方だけがその責任を負うべきものとはいえません。
このような場合には,破たん原因が一方にあるとはいえませんので,不法行為が成立しません。

夫婦が離婚するに至った原因について,どちらか一方のみにその責任があると判断するのは,不貞や暴力などを除くとなかなか難しく,一般には,離婚に伴う慰謝料が認められるケースというのはそれほど多くありません。

なお,調停や裁判上の和解などでは,一方が金銭給付に応じている場合に,紛争の早期の可決や財産分与などをまとめて解決する方法として,「慰謝料」ではなく,「解決金」という用語を使用される場合が多くあります。

不貞行為に基づく慰謝料

不貞行為イメージ

(1)不貞行為と慰謝料

男女の一方または双方に配偶者があるときの性的関係となる不倫,浮気と呼ばれる行為は,法律上では「不貞行為」と言われています。

夫婦は,互いに貞操を守る義務を負っており,「不貞行為」は,裁判上の離婚原因とされています。(民法770条1項1号)。
そして,夫(又は妻)がほかの異性と性的関係を持ち,その結果,離婚せざるを得なくなった場合には,精神的苦痛だけでなく,離婚という重大な結果を発生させたことについて,不法行為として慰謝料の支払い義務を負うこととなります。

(2)不貞行為による慰謝料の請求

不貞行為をした配偶者が,

  1. 不倫(性交渉)の事実がない
  2. 不倫行為は認めるが,夫婦関係がすでに破綻していたこと

などを理由争ってくるケースがあります。

まず,①については,不倫すなわち性交渉のあった事実は,慰謝料を請求する側がそれを立証する必要があります。この場合には証拠の有無が勝負の決め手となります。

そして,一般に,不倫を裁判所に認めてもらうためには,男女関係そのものの事実の記録(写真やビデオ)があれば一番ですが,少なくとも,

  • ㋐夫と相手の女性が,
  • ㋑二人で,
  • ㋒ホテルや個人の住宅に入り,
  • ㋓一定の時間を過ごした

という証拠が必要です。

「一定の時間」と言っても,ラブホテル等特殊な場所では数時間でも構いませんが,相手の住居では少なくても一泊することが必要でしょう。

性交渉の直接の現場を押さえることが必要であり,きわどい内容のメールのやりとりでだけでは「不倫」の証明としては不十分です。

このような場合には,プロである興信所(調査会社)に依頼して証拠を収集するのが確実です。

ただ,興信所の料金は,最低でも20万円程度,調査の仕方によっては100万円を越えることもありますので注意が必要です。

次に,②については,配偶者の一方が,異性と性交渉を行っていたとしても,その時点で,長年にわたって別居状態にあるなど,すでに夫婦関係が破綻していたと認められる場合には,慰謝料の請求は認められません。

ただ,夫婦関係が破綻していたかどうかは,客観的に認められる必要があるため,不和ではあったものの,同居を継続していたような場合には認められることは少ないと思われます。

慰謝料の額について

離婚に伴う慰謝料請求権が発生するか,発生するとして,その慰謝料をいくらとすべきかというのは,精神的な苦痛を慰謝するという性格上,非常に難しいことです。

一般に,離婚に伴う慰謝料の額は,次のような点を考慮して決定されることとなります。

① 破たんの原因

まず,婚姻が破たんした原因が何であり,破たん原因が夫又は妻のいずれにあるかを考えます。

そして,どうして破たんしたか,これについて双方にどの程度の責任があるのかを検討したうえで,その責任の割合によって,慰謝料の額を判断することになります。

② その他の生活状況

次に,婚姻期間,婚姻生活の状況,子どもの有無等を考えます。平穏な婚姻生活が続き,子どもも幼いのに,夫(又は妻)が一方的に不貞行為をして婚姻を破たんさせたような場合には,その原因を作った夫(又は妻)は,相当非難されるべきです。

このように破たん原因,破たんの程度や内容,破たんに至る経緯や動機等を考えて,離婚せざるを得なくなった妻(又は夫)の慰謝料を判断します。

これ以外にも,相手方の資力・収入のほか,離婚後の再婚の可能性や離婚後の経済的状況,子どもに対する影響の有無,子どもの年齢等など,さまざまな事情を総合的に考慮して決定されます。

慰謝料の金額は,離婚に至った原因行為が悪質である,結婚している期間が長い,相手の収入が多いなどの理由で大きくなる傾向にあります。

なお,裁判上の慰謝料の相場は,100万円~300万円くらいに落ち着くことが多いようです。もっとも,事案によっては50万円程度であったり,300万円以上と認定されるケースもあり,個別具体的な事情によって金額は異なっています。

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

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