債権譲渡の改正
今回は,民法の債権譲渡の規定の改正について考えてみたいと思います。
民法の債権法が平成29年5月26日に大きく改正されたことは,世間でも注目を集めたニュースで,ご存じの方も多いかもしれません。
債権譲渡とは,その名の通り,債権を譲渡することです。日常生活の中ではそれほどなじみのある行為ではないかもしれません。
しかし,中小企業などの企業活動では,例えば,取引先に対する売掛債権を担保として金融機関から融資を受けるといったことが考えられます(債権譲渡担保)。
そして,債権譲渡の改正がされたのも,近年,債権譲渡が中小企業の資金調達手法として注目されるようになったことが要因の一つです。
債権譲渡の従来の規定では,資金調達手法としてはやや利用しづらい面があるとの指摘がありました。
というのも,それは,債権譲渡禁止特約の問題にあります。
債権譲渡禁止特約とは,その名の通り債権の譲渡を禁止する合意であり,身近な例で言えば,預金債権などに付されています。
従来の民法では,債権に譲渡禁止特約が付されている場合であっても,債務者の同意があれば譲渡をすることができましたが,同意がない場合には譲渡は無効とされてきました。
つまり,この特約がついた債権を担保として資金調達をしようとしても,債務者の同意が得られなければ,目的が達成できなかったのです。
そして,そもそも,譲渡禁止特約は債権が債権回収業者等に譲渡され,厳しい取り立てをされることを防ぐという,いわば弱い債務者を保護するために認められてきたものですが,実際には,資本の大きい強い債務者が定型的に用いている場合が多く見られるようです。
このような実態に鑑みて,改正法では,譲渡禁止特約が付されている債権の譲渡は,債務者の同意そして,債権譲渡禁止特約があることを知っていたかどうかにかかわらず,有効であることになりました。
ただし,譲渡を受けた債権者(譲受人といいます。)は,直ちに,債務者に対して,支払いを請求することはできません(譲渡禁止特約の存在を知らなかった譲受人は請求できます。)。
譲受人が債権の回収をする手段は,債務者に対して供託を求めた上で,その供託金の還付を受けるか,譲渡をした元債権者への履行を催告し,それでも相当期間内に履行しない場合に,自己への履行を請求することができます。
今回の改正によって,債権譲渡は,企業にとって資金調達方法の一つとして,選択しやすい方法となったでしょう。