取締役による会社との利益相反取引について

取締役による会社との利益相反取引とは、取締役が会社の利益を犠牲にして、自己または第三者の利益を図るような取引のことを言います。

 

つまり、取締役が利益を得ることで、会社が損害を被るような取引のことです。

そして、会社法は、取締役が利益相反取引を行う場合は、事前に会社に対して当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないと定めています。

 

では、どのような行為が、利益相反取引に該当するのでしょうか。

会社法は、取締役が自己または第三者のために株式会社と取引をしようとする場合株式会社が取締役の債務を保証すること、その他取締役以外の者との間において株式会社とその取締役との利益が相反する取引をしようとする場合を規定しています。この(1)を直接取引による利益相反、(2)を間接取引による利益相反と言います。それぞれの場合について、例をあげてみましょう。

 

(1)直接取引による利益相反取引の例
取締役と会社間で行われる売買契約、会社から取締役へ行われる贈与、取締役からの利息がついた会社への金銭貸付、会社から取締役へ行われる債務免除、取締役が受取人となる会社からの約束手形の振り出し

 

(2)間接取引による利益相反取引の例
取締役と第三者間の債務を会社が保証する契約、取締役が第三者間とする債務を引き受ける契約

 

利益相反取引になるか、ならないかの判断のポイントは、取締役個人の利益にはなるが、会社には不利益にしかならない行為に該当するか否かにあります。

ですので、たとえば取締役が会社に対し、金銭を無利息・無担保で貸し付ける行為は、会社に不利益を与えるものではないので、利益相反取引にはあたりません。

同じように、会社に損害も不利益も与えない、取締役からの会社への無償贈与、債権の履行、相殺なども利益相反行為にはあたりません。

ただし、利益相反取引になるかどうかの判断がつかない場合は、その行為をする前に、会社の承認を得ておいた方がよいでしょう。

 

承認の方法については、取締役会設置会社と非設置会社では承認機関が異なります。

取締役会非設置会社の場合は、株主総会において当該取引の重要事項を報告して、承認を受けなければなりません。一方、取締役会設置会社の場合の承認機関は、取締役会となります。

 

なお、利益相反取引の承認は事後承認でも良いとされています。

 

次に処分に関してですが、利益相反取引によって会社が損害を被った場合、取締役は会社に対して損害賠償責任を負うことになります。

注意が必要なのは、会社の承認を得ていた利益相反取引であっても、会社がその取引によって損害を受けたのであれば、原則として取締役は会社に対し、損害賠償責任を負わなければならないということです。

 

また、当該取引を行った取締役だけでなく、会社が当該取引をすることを決定した取締役、当該取引に関する取締役会の承認決議に賛成した取締役も、任務を怠ったものと推定され、過失(不注意)がなかったことを証明しない限り、損害賠償責任を負います。

 

同族会社の場合には、利益相反取引を巡って争いになることが多くありますので、注意が必要です。

 

取締役による会社の利益相反取引など、会社に関する法的紛争などでお悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

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