性同一性障害の夫婦と嫡出子
先日,性同一性障害を理由に戸籍上の性別を女性から変更した大阪府の男性(30)とその妻(31)が、第三者の精子による人工授精で誕生した長男(3)を夫婦の子(嫡出子)として認めるよう求めた審判について,東京高裁が夫婦側の即時抗告を棄却する決定がありました。
これは,夫婦が,第三者の精子提供で妻が出産した子どもを夫婦の嫡出子として戸籍を届け出たところ,役所が嫡出子として受理せず,非嫡出子(婚外子)として取り扱われ、戸籍の父親欄は空欄となっているのが不当であるとして訂正を求めた家事審判です。
一般に民法では,婚姻中に妻が懐妊した子を「夫の子と推定する」と規定しています。
また,役所の窓口では,一般的に,第三者の精子提供で生まれた子供かどうかは確認できないため,出生届は嫡出子として受理されています。
東京高裁は,「夫は男性として生殖能力がないのは戸籍の記載から明らか」と指摘したうえで,「生理的な血縁が存在しないことが明らかな場合,(民法の推定)規定は適用できない」と結論付けています。
確かに,民法の推定規定との関係では,東京高裁の決定は法的には正当なようにも思えます。
しかし,そもそも民法は,性同一性障害の夫婦や人工授精による子どもを想定していなかったと思われます。
また,この問題は,子どもの観点からも考えるべきだと思いますし,戸籍の表示の問題もあると思います。
戸籍上,嫡出子か非嫡出子かということで,子どもが差別されることも現実に存在しているということも,考える必要があるのではないのでしょうか。
この問題について,皆さんはどのように考えられますか?
この記事の執筆者:津田 和之 弁護士

神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)