遺言における「遺贈」と「相続させる」
遺言による財産の承継には、遺言の方法として、「遺贈する」(遺贈)と「相続させる」(相続)の二つあるのを皆さんご存知ですか?
特定の財産を特定の相続人に確実に承継させたい場合、遺言書の中で、例えば「Aの不動産を長男に相続させる」などと記載する遺言のことを、2019年7月1日に施行された相続法改正から「特定財産承継遺言」と呼ぶことになりました(民法第1014条)。
これによって遺言執行者の権利と義務が拡大されました。詳しくは「相続法改正に伴う遺言執行者の権限について~『相続させる』~」のページをご覧ください。
無償譲渡は遺言によって相続人以外でも可能だが、相続させる遺言は相続人に対してのみ
遺贈(民法964条)は遺言による財産の無償譲渡です。
遺贈は相続人、相続人以外のいずれに対してもできますが、相続させる遺言は相続人に対してしかできません。
特定の相続人に対し、特定の財産を承継させる場合、公正証書遺言の実務では、「遺贈」ではなく、「相続させる」旨の遺言が作成されてきました。
最近は、自筆証書遺言にもよく使われているようです。
「遺贈する」と「相続させる」の効果の違い
では、遺言における「遺贈する」と「相続させる」とは、その法的効果が異なるのでしょうか?
結論的に言うと、特定の相続人に対し、特定の財産を承継させる場合、「相続させる」とした方が「遺贈する」というよりも、一般的に有利です。
これは、判例により、
「相続させる」旨の遺言は、遺産分割方法を定めた遺言であるが、何らの行為を要せず、被相続人の死亡の時にさかのぼって直ちに当該遺産がその相続人に相続によって承継される
と判示したことによります。
例を挙げて説明します。
不動産の移転登記について、「遺贈」の場合は、共同相続人との共同申請であり、遺言執行者が選任されていなければ、共同相続人全員の協力が必要となります。
これに対して、「相続させる」旨の遺言であれば、受益相続人の単独申請で足ります。
表にまとめますと、
不動産の移転登記について
| 「遺贈」 | 「相続させる」旨の遺言 |
|---|---|
| 共同相続人との共同申請 | 受益相続人の単独申請で足りる |
| 遺言執行者が選任されていなければ、共同相続人全員の協力が必要 | ― |
次に、対象財産が借地権、借家権の場合、遺贈による権利移転について、貸主の承諾が必要となりますが、「相続させる」旨の遺言は承諾が不要です。
対象財産が借地権、借家権の場合
| 遺贈による権利移転 | 「相続させる」旨の遺言 |
|---|---|
| 貸主の承諾が必要 | 貸主の承諾が不要 |
対象財産が農地の場合
さらに、対象財産が農地の場合、権利取得に農業委員会又は都道府県知事の許可が必要ですが、「相続させる」旨の遺言は許可は不要です。
これ以外にも、いろいろと「相続させる」旨の遺言の方が有利な点があります。
しかし、「遺贈する」と書かれていた場合には、たとえ受取人が相続人であったとしても、判例では「遺贈」としか解釈できないとされています。
このように遺言書の文言一つで、意図しない負担を相続人に与えてしまうことにもなるので、気をつけましょう。
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