いじめによる自殺と因果関係

大津市で、昨年、いじめを受けていた市立中学2年の男子生徒が自宅マンションから飛び降りて自殺した事件を巡って、市教委の生徒を対象としたアンケート調査で「葬式ごっこ」とか「自殺の練習の練習と言って首を絞める」などの記載があったことが明らかになったとの報道がありました。

 

この事件については、まず、いじめの事実の有無が問題だと思いますが、これまでの新聞報道によれば、いじめの事実があったことは間違いのない事実のような気がします。

これについては、市教委の対応は、次から次からいろいろな事実が出てくるというもので、お粗末極まりないと言えると思います。

学校は、生徒に対して安全配慮義務を負っているのですから、生徒によるいじめが繰り返し行われていた場合には、学校の責任は免れないと思います。

 

次に、この事件では、いじめの事実があったとして、いじめと生徒の自殺の間に因果関係があるのかというのが大きな争点になると思います。

要は、いじめがあったから生徒は自殺したといえるかということです。

 

この種の裁判で、最も争点になるのは、この因果関係であり、この点の立証はなかなか難しく、裁判でもいじめは認めても自殺との因果関係を否定した例は多いようです。

これについては、いじめの内容・程度、いじめが一般的にみて自殺に追い込まれる程度のものだったのか、自殺に至る経緯や自殺直前のいじめの有無、自殺直前の生徒の言動・態度、いじめと自殺との時間的な密接性などが問題になると思います。

 

この点について、大津市長は、「(男子生徒は)いじめがあったから亡くなったんだと思う。遺族の主張を受け入れ、和解したい」と述べ、いじめと自殺との因果関係を認めて和解を目指す意向を示したようです。

 

基本的には、今回の事例では、報道を見る限り、いじめと自殺との因果関係はあるように思われますので、市長の姿勢は一定の評価はできると思います。

 

ただ、因果関係を認めて和解する場合は、その和解金は税金で支払われるということを忘れてはいけないと思います。

市長、市教委や学校の先生が負担するのではないのです。

 

そうすると、いじめと自殺の因果関係を世論向けに安易に認めるということではなく、市や学校の責任を明確にするためにも、徹底的に検証する必要があるのではないでしょうか。

安易に和解して、早く幕引きを図ろうということであれば、決して許されないと思います。

 

最後に、いじめで自殺された生徒のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

学校での事件事故などでお悩みの方(学校側も含む)は、お気軽に当事務所までご相談ください。