学校での事故と賠償責任

先日、大津市のいじめによる自殺として訴訟になっている事件で、全校生徒にアンケートをしたところ、男子生徒が自殺の練習をさせられていたという事実が明らかになったとの新聞報道がありました。

 

このような学校でのいじめは、いじめを行った生徒や加担した生徒の責任はもちろん、このようないじめを放置し、防止できなかった学校側の責任も問われるべきだと思います。

 

今日は、学校での生徒間のいじめや暴力事件が発生した場合の学校側の法的な責任について考えたいと思います。

 

このような事件が起こった場合の学校側の対応は、「校内で調査をしたが、いじめの事実はなかった。」、「子ども同士のいじめやけんかで、教師の目を盗んで行われたことで予想できなかった。学校に責任はない」という態度であることが多いと思います。

 

しかし、法的には、学校の教師には生徒のけんかやいじめによる事故を未然に防止するための安全配慮義務があり、これに対する違反が認められた場合には、公立校の場合は国または公共団体が、私立校の場合は学校法人が責任を負うことになります。

 

では、学校の安全配慮義務はどのような場合に認められるのでしょうか?

 

これについては、学校での教育活動やこれと密接な関係のある学校生活において、通常予測可能な事故が発生した場合とされています。

 

このような事件は、休み時間や放課後に発生することが多いのですが、休み時間は学校における教育活動と密接な関係にあるので、教師には生徒の行動についても一般的な指導監督義務があるとされています。

この点、 確かに、休み時間は教師も教員室に戻るのが普通ですから、特別に危険な行為を行う生徒のいることが予測できない限り、教室に留まって生徒の行動を監督していなくても、職務上の注意義務を怠ったことにはならないといえない場合もあります。

 

しかし、担任教師をはじめ学校側が、いじめられている事態を知っていたり、傷害を負わせた生徒の問題行動を知っていながら、適切な措置を取らずに放置し事故が起きたのであれば、学校側に注意義務違反が認められ、学校が責任を負うことになります。

 

これに対して、例えば、これまで、他の生徒に対し暴行を加えたことのない生徒が、傷害を負わせたような突発的な事故は予測不可能で、学校側が防止のために具体的措置を取る義務があったということはできないとされる場合もあります。

 

また、生徒の年齢によっても、学校側に要求される注意義務の程度が変わります。

生徒の年齢が上がると、それだけ自主的な判断に任せる部分が多くなり、教師の指導監督義務が狭まってきます。

 

これらの事情を総合して、学校側に事故について安全配慮義務違反があったのかどうかが判断されることになります。

 

そして、学校で事件事故が発生した場合は、学校側は真しに問題を受け止めて、きちんと調査をしたうえで、これらのことも踏まえて責任ある法的な対応を取るべきだと思います。

 

学校での事件事故などの法的なトラブルについてお悩みの方(学校・行政側も含む)は、どうぞ当事務所までお気軽にご相談ください。