労働者派遣法の改正
今年の3月に、派遣労働者の待遇改善を狙いとした改正労働者派遣法が成立しました。
今日は、この法律改正により、派遣で働く人の環境はどのように変わるのかについて、考えてみたいと思います。
一時期、製造業務派遣や登録型派遣が禁止になるかもしれないという話がありましたが、最終的にはそのようなことはなくなりました。
法改正によって変更される主な項目は、次の①~⑦です。
①日雇い派遣の一部禁止
日雇い派遣(雇用契約が30日以内の派遣)の一部が禁止されます。すべて禁止されるわけではなく、業務内容などによっては引き続き日雇い派遣が認められますが、詳細はまだ決まっていません。
②グループ企業内派遣は8割までに規制
派遣会社と同じグループ企業への派遣は、派遣会社の全派遣スタッフの総労働時間の8割までしか認められなくなります。
③1年以内に辞めた人を派遣で受入れることの禁止
会社を辞めてから1年経過していない人を、派遣スタッフとして受け入れることが禁止されます。例外を認めるかはこれから審議されます。
④派遣スタッフの均衡処遇の確保
派遣スタッフと同一の職務に携わる派遣先の社員との間に、不合理な差別がないよう努力義務が課せられます。
⑤マージン率の公開と派遣料金の明示
派遣会社は、派遣料金から派遣スタッフの賃金を除いた金額の割合(マージン率)を公開しなければならなくなります。
また、派遣スタッフに派遣料金を明示することも必要です。
⑥「直接雇用みなし規定」の創設
偽装請負や自由化業務で受入れ期限の上限(1年や3年など)を越えて派遣スタッフの活用を続けていた場合、派遣先企業と派遣スタッフの間に雇用契約が成立するというものです。
この規定については、改正派遣法の施行日の3年後から適用されます。
なお、この法律の施行は、公布の日から6カ月以内の政令で定める日とされており、平成24年4月6日公布されました。
いずれも重要な改正ですが、特に、⑥の「直接雇用みなし規定」の創設が重要な改正だと思います。
これまでであれば、偽装請負などについて、労働者が違法な労働者派遣だと訴えた場合、労働局は「違法状態だからやめなさい」と指導することとなり、結局、その労働者が職を失うことにもなりかねませんでした。
改正後は、このような場合、雇用契約の成立が明記されましたので、安心して労働者が声をあげられるようになると思われます。
また、他方で、派遣法改正により、企業側は、法改正に対応したしっかりとした体制を取ることが迫られると思います。
派遣労働など労働問題についてお悩みの方は、当事務所までどうぞお気軽にご相談ください。