夫婦の一方がした第三者との契約,借金について

前回は,夫婦間の借金について説明しました。今回は,夫婦のどちらか一方が第三者から借金等をした場合,他方に返済義務があるのか,について,考えてみます。

 

例えば,妻が夫に断りなく,自己名義でキャッシングなどで借金をして,子どもの習い事の費用に充てた場合,夫はその借金を妻に変わって返済しなければならないのでしょうか?

 

夫婦の一方が第三者との間で行った契約や借金については,その契約や借金が,「日常の家事に関する債務」かどうか,が判断の決め手となります。
「日常の家事」とは,「夫婦の共同生活に通常必要とされる事務」のことで,夫婦は連帯して責任を負うと定められているからです(民法761条)。

 

例えば,夫が家族と共に住む自宅で使う家具や電化製品を,夫名義で割賦購入する契約をしましたが,その支払いが滞った場合,妻に支払う義務が生じるのです。妻が「夫が選んだ冷蔵庫だから支払わない」などと言ったとしても,売った側は夫婦に売ったと考えるのが普通なので,妻の言い訳は通用しません。

 

ただ,どのような契約が「日常の家事」の範囲内か,の判断は難しく,裁判になることもあります。
裁判で,連帯責任が認められなかった例としては,妻が生後6ヶ月の赤ちゃん向けに,英語教材セットの割賦契約をした事案があります。英語教材セットの価格が夫の月収の3倍を超え,赤ちゃんにすぐに必要な教材ではなく,販売業者が「ご主人に内緒で」と言っていたことから,この契約は「日常家事」の範囲を超え,夫に連帯責任を負わせることはできない,と判断しました(平成14年12月26日東京簡裁)。

 

逆に,認められた例として,妻が幼稚園児の子どものために英語教材を購入する契約をした事案で,夫婦の生活水準に照らして不相当に高額ではないこと,妻が子どもの教育のために購入した教材であることから,夫の連帯責任を認めました(平成10年12月2日東京地裁)。

 

冒頭の事案のような「子どもの習い事」といっても,その家庭の収入や社会的な地位,契約の内容や代金等によって「日常家事」にあたるか否かは変わってきます。

 

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夫婦間の借金について

夫婦の間でお金の貸し借りをした場合に、返済する必要はあるのでしょうか。

 

婚姻中に夫婦の間で借金をした場合でも,原則としては,返済する必要があります。

例えば,妻が自分の親の借金返済のために夫からお金を借りた,夫が趣味のギャンブルのため妻からお金を借りた,等の場合は,返してもらえます。

 

利息や返済の時期は,夫婦間の合意(契約)に基づきますが,夫婦間のことなので,合意をしていなかった場合は,利息は法定利息,貸した方が返済時期は相当の期間を定めて催告(返済するように伝えること)した後,ということになります。

 

 

一方で,夫婦は,婚姻中に生じた費用(婚姻費用)を分担します(民法760条)。婚姻費用とは,その家庭の収入や地位などに基づいて,通常の社会生活を維持するために必要な生活費,のことです。

 

そうすると,夫婦間の借金が,この婚姻費用に充てるためだった場合は,もともと分担するものなので,返済しなくても良いことになります。例えば,専業主婦の妻が,夫から受け取る毎月の生活費が足りなくて,夫から借金をして,日々の食費に充てる,子どもの塾代に使う,などが理由なら,妻は夫に,返さなくてもよいことになります。

 

 

夫婦間の借金が問題となるのは,夫婦関係が悪化したときや,離婚するときが多いでしょう。

 

 

離婚時には,一般には,婚姻中に築いた財産や債務を分ける財産分与という清算をします。財産分与は,夫婦が協力して得た財産や,共有財産を平等に分ける作業です。この際,夫婦間に借金があれば,その借金の清算をすることになります。

 

 

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交通事故の「異時事故」の損害賠償責任について

異時事故とは,別の日時に発生した事故のことをいいます。

 

例えば,Aが,5月1日に車を運転していて,脇道から飛び出してきたB車に衝突されました。(第1事故)。

その1カ月後,Aが車で信号待ちをしていたところ,C車から追突されました(第2事故)。

 

Aは第1事故によって頸椎捻挫と腰椎捻挫によって首周りの痛みや手のしびれ,腰痛などを訴えて通院治療中に第2事故が発生し,第2事故の後に,これらの症状が悪化して,後遺障害が残ってしまいました。

 

このように,2個以上の事故が別の時に発生した場合を異時事故といいます。
異時事故の場合,第2事故以降のAの症状の悪化,後遺障害について,誰にどのくらいの損害賠償請求ができるのでしょうか。

 

Aにとっては,2つの事故により症状が悪化して,後遺障害が残ったので,BとCの両方に対して,連帯して損害賠償請求をしたいところです。連帯責任が認められると,Aは,B,Cのどちらに対しても損害賠償額の全額を支払うよう請求できるので,一方が無保険や無資力の場合でも,安心です。
一方,BとCからしてみれば,連帯責任ではなくて,自分の起こした事故による傷害の部分しか責任を負いたくないと思うことでしょう。

 

裁判例では,3カ月以内に起こった2つの事故において被害者が同一部位に受傷した事案で,「後遺障害は,双方の事故による傷害に基づくもの」として,加害者側に連帯責任を認めた例があります(東京地裁平成21年2月5日)。

 

また,その逆に,1週間以内の2つの事故に遭い,後遺症が残った事案では,頚部の受傷部位は共通しているが,事故態様が違うこと,第2事故後の症状に対する第1事故のの寄与度は非常に小さいと考えられることなどを考慮して,連帯責任を認めませんでした。この裁判では,第1事故,第2事故それぞれの加害者に5:95の割合で個別の賠償責任を認めています(大阪地裁平成26年5月13日)。

 

このように,異時事故による傷害や後遺障害の損害賠償責任は,事故態様や傷害の部位,各事故の傷害への寄与度(影響の強さ)などの細かい認定に基づいて行われます。医師による医学的な見地も必要となります。

 

被害者救済の面からは連帯責任が認められるとよいのですが,加害者の負担は重くなるため,公平の観点からいつでも認められるわけではありません。

 

交通事故の被害者となり,お悩みの方は,ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。

遺留分の放棄,撤回について

相続には,「遺留分」という制度があります。
被相続人(亡くなった方)が遺言によって,遺贈や財産の分け方を決めるなどして,法定相続人に相続財産を残さない意思を表明していた場合でも,一定の相続人には「遺留分」という取り分が認められています。

 

例えば,A(被相続人)には,妻,長男,長女がいる場合で,Aは長年連れ添った妻と,介護をしてくれた長女の2人だけに全財産を相続させたいと思い,遺言書を作成しました。Aの生前の意思を尊重すれば,長男は財産を相続することができないことになりそうです。

 

しかし,民法では兄弟姉妹以外の相続人については,遺留分として定められた割合に相当する額を受ける,と規定していて,相続人である長男に「遺留分」を相当する額を受け取る権利があることを認めています。兄弟姉妹以外の法定相続人には,遺言でも侵害できない,相続財産の最低限の取り分を保証しているのです。
そのため,長男は,Aの妻と長女に対して「遺留分減殺請求」を行って,法定相続分の2分の1を手に入れることができます。

 

では,Aの生前の意思を尊重し,長男が遺留分減殺請求をしないようにするにはどうしたらよいでしょうか。
方法としては,Aの生前であれば,長男が遺留分の放棄の許可を裁判所に申し立てて,許可をもらう必要があります。Aの死後は,長男が遺留分を放棄する,減殺請求をしない,時効が成立する,ことが考えられます。

 

また,法的な拘束力はありませんが,Aが自分の思いを伝えるため,遺言に「長男には遺留分減殺請求をないように求める」などと記載することもあります。また,遺言で,長男が遺留分減殺請求した場合に備えて,減殺請求する財産の順序を指定することもできます。

 

Aの生前に長男が裁判所から遺留分の放棄の許可を受けた場合でも,事情が変わった場合には,長男は裁判所に放棄の撤回の許可の審判を申し立てることができます。撤回できるかどうかは,裁判所に判断に委ねられます。

 

一方,Aが亡くなり相続が開始した後は,遺留分の放棄の撤回は,原則としてできません。相続が開始すると,相続人や遺贈を受けた者などに権利や義務が発生するため,安易に撤回が認められると,多くの人たちの権利が不安定になるためです。

 

このように,遺留分は,一定の相続人に保障されている権利で,被相続人にもコントロールが難しいのです。何らかの理由で,財産を残したくない相続人がいる場合は,生前の遺留分放棄の手続きや,遺言書の記載内容を検討したほうがよいでしょう。

 

相続や遺留分についてのご相談のある方は,当事務所に,お気軽にご電話ください。

離婚前の財産の保全について~一方的な財産の処分を阻止するために

円満に暮らしていた夫婦でも,何かのきっかけで,夫婦仲が悪くなり,離婚の危機に直面することがあります。

 

離婚話が持ち上がって,離婚が成立するまでの間に,配偶者が勝手に自己名義の不動産や,価値のある動産(自動車や貴金属など)などの財産を処分してしまうことがあります。

 

離婚が成立すれば,婚姻中に夫婦で共に築いた財産は財産分与の対象となるため,その前に自己名義の不動産や価値のある動産などを処分して使ってしまったり,預貯金債権を隠したりしてしまえば,分与されずにすむ,と考えるからでしょう。

 

不動産などは,他人に売却などされてしまうと,現物を取り戻すことは難しくなります。
そこで,今回は,離婚前に財産分与の対象となる財産を勝手に処分されないようにするための方法について,説明します。

 

例として,婚姻中に購入した夫名義のマンションについて考えてみましょう。

 

夫が所有する夫名義のマンションは,当然,夫が自由に売却できます。婚姻中に購入したものであっても,妻が住んでいても,夫が単独で売却可能です。しかし,離婚すれば,婚姻中に築いた財産として財産分与の対象となり,妻に所有権が移転できる可能性があります。

 

そこで,妻としては,「財産分与請求権」に基づいて,裁判所等に離婚前に財産の処分をさせないことを求めることができます。
方法としては,①民事保全手続,②調停前の仮の処分,③審判前の保全処分があります。

 

①民事保全手続きは,裁判所に対して,離婚に伴う財産分与請求権を被保全権利として,夫名義の不動産について「処分禁止の仮処分命令」の申立を行うものです。

 

離婚調停申立前でも手続きを始められることと,強制的な執行力があることが,メリットです。しかし,離婚が前提となるので,離婚事由があること,離婚判決がなされる蓋然性(がいぜんせい)(高い確実性)があること,離婚判決で夫名義のマンションが妻に現物分与される蓋然性が高いこと,保証金,などが要求されます。

 

②調停前の仮の処分とは,離婚調停申立の後,調停成立前に,不動産の処分を防ぐために行われ,調停委員会が命じる処分です。強制力がないので,調停中に夫がマンションを売却してしまった場合,購入した第三者からマンションを取り戻すことはできません。

 

③審判前の保全処分は,離婚調停中から,審判が終了するまでの間に行う手続きです。保全処分命令には,強制力がありますが,審判が認められる必然性が高いことや,保全の必要性や緊急性があること,保証金などが要求されます。

 

このように,離婚前に配偶者が財産を処分することを防ぐには,処分される前に,できるだけ早く,法的な手続きをとる必要があります。

 

離婚や離婚に伴う財産分与等でお困りの方は,当事務所にお気軽にお電話ください。

過労事故死について

24歳の男性が,不規則で過重な業務後に,原付バイクを運転して帰宅中,バイクごと電柱に激突するという交通事故によって死亡した事案について,裁判所が「過労事故死」と認定し,企業に安全配慮義務違反による損害賠償責任を認める,画期的な和解勧告が成立しました(横浜地裁川崎支部平成30年2月8日)

 

裁判所は,この和解勧告の中で,過労ないし極度の睡眠不足による交通事故死を含む労災事故死を「過労事故死」ということができる,としました。

 

過労死等防止対策推進法2条では,「過労死等」とは,脳血管疾患や心臓疾患を原因とする死亡若しくは精神障害を原因とする自殺による死亡,又はこれらの疾患としています。
このように,通勤中の交通事故死については,会社に責任を問える労働災害の類型としての「過労死」「過労自殺」ではない,との認識から,これまで,会社の責任を認めた裁判例はほとんどありませんでした。

 

冒頭の和解勧告の事案の概要は,次の通りです。
亡くなった男性は,不規則な仕事で,深夜,早朝も業務に従事していまいました。交通事故発生の前日の拘束時間は計21時間42分間,事故直前の10日間の拘束時間は1日平均14時間弱,最大23時間,残業時間は,事故前1カ月間は91時間49分,事故前6カ月間は63時間20分でした。そして,会社の指示もあり,片道約1時間の距離を,原付バイクで通勤していました。
裁判所は,本件事故の原因として,男性が,疲労が過度に蓄積し,顕著な睡眠不足の状態にあったために注意力が低下し,一刻も早く就眠するために帰宅を急いで原付バイクを運転することとなり,運転中に疲労及び睡眠不足の心身の状態に起因して居眠り状態に陥って運転操作を誤った,と認定しました。

 

そして,労働者が疲労や心理的負荷等が過度に蓄積したり,極度の睡眠不足の状態に陥ると,自動車や原付バイクの正常な運転ができないおそれがあることは,周知のところであり,これと同様に,帰宅の途中など使用者(会社側)の指揮管理する勤務時間及び勤務場所に密接する時間及び場所において,事故が生じる危険性のあることも周知であるといえる,として,会社は労働者に通勤中等の事故が生じないように回避する注意義務を負う,と述べました。

 

そのうえで,本事案については,会社又は上司に対して,業務の負担を軽減させるための措置を講じたり,適切な通勤の方法等を指示するなどして,男性が,疲労が過度に蓄積し,顕著な睡眠不足の状態に陥り,心身の健康を害したり,生命・身体を害する事故が生じることを回避すべき義務を負っていたというべきなのに,これを怠った,と認めました。会社又は上司の義務違反がなければ,事故発生を回避することができたとして,遺族に対して男性の死亡による損害賠償責任を認めたのです。

 

今後は,通勤中の事故について「過労事故死」として認められて,労働者や家族が救済される範囲が広がることが,期待できます。

 

当事務所では,労働問題に関する相談をお受けしています。労働中や通勤中の事故等でお悩みの方は,ぜひ,当事務所にお気軽にご電話ください。

証拠の収集について

民事裁判では,証拠が重要です。

 

例として,Aが,Bに100万円貸したとして,返還を求めたという事案を考えてみます。Bは「借金はしていない」と主張し,Aが借用書などの証拠を提出できず,裁判所がどちらの主張が真実なのか分からない(「真偽不明」といいます)状況になったとします。

この場合,借金があるという事実が証明できなかったことになり,Aが不利益を被り,敗訴することになります。
この事案の場合は,Aが自ら借用書を作成したり,保存したりしていないことから,仕方ないといえるでしょう。

 

しかし,交通事故や医療過誤などの場合,はじめから,裁判の相手側や三者が証拠を持っていることが多いので,証拠の収集はかなり困難になることが多いです。今回はこのような場合の証拠の収集方法について,説明します。

 

例えば,医療過誤の場合,カルテ(診療録)や検査の結果,画像など,裁判で重要となる証拠はほとんど医療機関側にあります。患者が医療過誤について争おうと思っても,まずは,相手側の病院などから証拠を集めたり,裁判所に提出してもらったりしなくてはなりません。

相手側は,自分に不利となる証拠はなかなか提出しようとしないでしょう。また,最悪の場合,証拠を隠滅してしまう可能性もあります。
また,離婚の場合の財産分与の協議において,相手側がどのような財産をどのくらい持っているのか分からずに,困ることもあります。

 

このような場合,証拠収集の方法がいくつかあります。
証拠を隠滅されることを防ぐ方法として予め証拠を確保しておく「証拠保全」,書類を所持している人に依頼する「文書送付嘱託」,官庁や学校などの団体に対して書類の写しなどを求める「調査嘱託」,証拠を裁判所に提出するように命じる「文書提出命令」,などの手続があります。いずれも,その証拠を必要とする人が裁判所に申し立てて,裁判所の判断で行われます。
また,弁護士が,弁護士会を通じて官庁や企業などの団体に対して必要な事項を調査,照会する「弁護士照会」という制度もあります。

 

証拠の収集は,文書等を特定して,裁判所が定める規定に基づいて申し立てる必要があります。専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

 

交通事故,離婚訴訟,借金などに民事事件に関するトラブルがある場合,「証拠がないかも」と思っていても,上記のように様々な制度により証拠を得る方法があります。あきらめないで,当事務所にお気軽にご相談ください。

接触していない交通事故について

交通事故で,相手と直接はぶつかっていないけれど,転んでけがをしたなどの場合,被害者は,相手側に損害賠償請求ができるのでしょうか。

 

例えば、①狭い道路で車を運転中,対向車が来たので咄嗟に左にハンドルを切ったら,左側道を歩いていた歩行者が驚いて避けようとして転倒しけがをした。

②前方車が左折したところ,後ろを走行していたバイクの運転手が衝突を避けるために急ブレーキをかけバランスを崩してバイクごと転倒してけがをした。

③自転車を運転中,曲がり角で出合い頭に他の自転車とぶつかりそうになり,よけようとして,バランスを崩して転倒してけがをした。

 

①,②,③は,いずれも,相手と衝突していません。このような接触しないで発生した事故を非接触事故といいます。
加害者としては「勝手に転倒しただけで,ぶつかっていないから責任はない」と主張するだろうし,被害者としては「ぶつかっていなくても,相手のせいで負傷した」と主張するでしょう。

 

非接触事故について判断した最高裁判例(昭和47年5月30日)があります。この判例は,軽二輪が運転を誤り,歩行者の方に突進してきたため,歩行者が驚いて転倒して傷害を負ったという事案です。

 

最高裁は,「接触がないときであっても,車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであって,歩行者がこれによって危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷する等,衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合には,その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である」としました。

 

この判例は,「接触がない」ときでも,車の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係が認められる場合があることを示したものです。

 

事例①,②,③の場合も,負傷した被害者は,原因を作った加害者に対して,損害賠償を請求できる可能性があります。
まずは,衝突していなくても,車や自転車等がかかわる事故の場合は,交通事故として,警察に届けることが重要です。

 

そして,衝突していない場合は,加害者にどのような過失があるのか,過失があるとして被害者はその運行によって負傷したといえるのか,被害者側の過失はどう考えるのか,などについて,はっきりとした基準がありません。そのため,衝突を伴う交通事故の場合以上に,立証が難しいことが多いのが,現状です。

 

交通事故について,損害保険会社との示談が進まないなど,お悩みの場合には,当事務所に,お気軽にお電話ください。

症状固定後の治療費・将来治療費について

交通事故により傷害を受けた被害者は,まずは,その傷害の療養のために,それが治癒するか,又は症状が固定し後遺障害が確定するまでの間,治療費その他の費用を負担することとなります。

 

そして,症状固定日までの治療費は,事故により被った損害の一つとして,損害賠償の対象となります。
ところが,症状固定後に通院等により負担した治療費は,原則として賠償対象としては認められないとされています。

 

これは,症状固定とは,治療しても症状が改善しない状態のことをいうので,症状固定後に治療をしても,いわば無駄な費用の支出となり,加害者に負担させるのは不相当ということになるからです。

 

もっとも,症状固定後であっても,症状の内容,程度,治療の内容により必要性・相当性が認められる場合,例えば,
①いわゆる植物状態(遷延性意識障害)になったとき等で生命を維持するうえで将来治療費を支払う必要性・蓋然性が認められる場合,
②治療によって症状の悪化を防止する必要性が認められる場合,
③症状固定後も強い身体的苦痛が残り,苦痛を軽減するために治療の必要性が認められる場合
等の事情があれば,損害賠償の対象として認められることもあります。

 

また,このような治療行為が将来にわたって行われる必要があれば,「症状固定後の治療費」というよりも,「将来治療費」として,損害賠償を請求することができます。

 

「将来治療費」には,症状悪化を防ぐための医療行為だけでなく,将来一定時間経過後に必要となることが予想される手術費用等も含まれます。

 

ただし,このような治療費が損害として認められるためには,将来の治療費の支出の必要性・相当性,支出の蓋然性(可能性)・金額について,被害者側で主張・立証する必要があります。

 

具体的には、診断書や意見書に記載された医師の意見とともに,診療記録,過去及び現在の治療費に関する診療報酬明細書,被害者又は近親者の報告書・陳述書等から具体的に認められる症状固定後の治療状況が考慮されることになります。

 

このように,症状固定後の治療費,将来治療費が損害賠償の対象として認められるかどうかは,症状の内容,程度,治療の内容,それらを立証する上記のような証拠資料が存在するかどうかによって,ケース・バイ・ケースといえるでしょう。

 

交通事故の被害者でお悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

労災で休業中の社会保険について

業務中の災害が原因で仕事を休業した場合,従業員は,労災保険から,治療費などについては療養補償給付,賃金に代わるものとして休業補償給付を受けることができます。

 

では,労災で休業中の間,健康保険や厚生年金などの社会保険はどうなるのでしょうか。

 

従業員は,労災で休業中でも,健康保険の被保険者としての資格は継続しています。会社には,賃金を支払っていない間も,従業員の健康保険料を納付する義務があります。
労災で休業中に労災保険から支払われる療養補償給付は,労災によって負った傷害についてのみに給付されるので,労災とは関係のないケガや病気の治療費等については,健康保険を使うことになります。
そのため,労災で休業中だったとしても,健康保険に加入していないと困るのです。

 

また,健康保険料は,健康保険法で被保険者(従業員)と事業主(会社)が2分の1ずつ負担すると定められています。
会社から賃金が支払われていない場合でも,従業員には保険料の2分の1を支払う義務があるのです。でも,賃金からの天引きはできないので,①毎月,従業員から徴収する,②一旦,会社が立て替えて休業終了後に賃金から差し引く,などの方法をとるしかありません。

 

厚生年金保険についても,同様です。

 

トラブルを避けるために,事前に,会社と従業員との間で,支払方法を話し合っておいた方がよいでしょう。

 

なお,育児休業や介護休業の場合,会社からの賃金がストップしている間は,雇用保険から休業給付金が支払われます。
育児休業中は,会社,従業員共に,健康保険料,厚生年金保険料が免除となります。
しかし,介護休業中は,保険料納付義務があります。労災の休業中と同じです。

 

労災など労働トラブルでお悩みの方は,お気軽に当事務所までご相談ください。

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