労災の保険給付の不支給決定に対して争う方法について

 仕事中に事故などに遭ってケガをした場合には、被災労働者は、勤務先を通じて、労働基準監督署長に対して、労災として療養補償給付などの支給申請をすることとなります。

 ただ、労働基準監督署長が労災と認めずに、療養補償給付などの労災保険給付の不支給決定をしたときに、被災労働者が、この労災保険給付に関する決定について、不服がある場合に、どのように争えばよいのでしょうか。

 今日は、この問題について考えてみたいと思います。

 まず、労災保険給付に関する決定に不服がある場合には、その決定を行った労働基準監督署長を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して、被災労働者自身が、審査請求をする必要があります。

 この場合に、労働災害補償法では、審査請求前置を定められているため、審査請求をせずに、裁判所に対して、訴訟を提起することは原則として認められていません。

 そして、被災労働者が、労災保険給付に関する決定について審査請求をする場合には、労働者災害補償保険審査官に対して、審査請求の理由などを記載した申立書を提出する必要があります。

 ただ、労働基準監督署長からの労災保険給付の不支給決定は、はがきに簡単な理由しか記載されておらず、詳細な理由などはわかりません。

 そこで、審査請求をするにあたって、労災保険給付の不支給決定の理由や内容を知るために、審査請求に先立って、個人情報の開示請求をすることが一般的です。 

 なお、この場合の個人情報の開示請求は、労災保険給付の不支給決定に関する書類一式を対象として、労働局に対して行うこととなります。 

次に、審査請求に対して、労働者災害補償審査官の裁決があった場合に、その裁決に不服がある場合は、裁決のあったことを知った日から、2か月以内に労働保険審査官に対して再審査請求をすることができます。

 また、再審査請求を行わずに、審査請求に対する裁決のあったことを知った日から6か月以内に、国を被告として、労災保険給付の不支給決定の取消訴訟を提起することもできます。

 さらに、再審査請求に対して、労働保険審査官の裁決があった場合に、6か月以内に、国を被告として、労災保険給付の不支給決定の取消訴訟を提起することができます。

 このように、労災保険給付に関する決定に不服がある場合には、審査請求の申立てや訴訟提起により争うことができますが、審査請求や訴訟については、法的な知識が不可欠ですので、近くの弁護士に相談することをお勧めします。  労災に関することでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください

この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)