労災申請について会社が協力してくれない場合の対応について

労災イメージ

 仕事中に事故などに遭ってケガをした場合には、労働者は、労働基準監督署長に対して、療養補償給付など労災補償給付の申請(以下「労災申請」といいます。)をすることとなります。

 そして、労災申請の手続きは、多くの場合は、会社が、主体的に申請の手続きをしてくれます。

 ところが、会社が、労災申請の手続きへの協力や労災申請の書類への証明を拒否する場合があります。

 会社が労災申請などを拒否する場合とは、会社が労災だと認めない、保険料があがるのを防ぎたい、制度に関する知識不足等、様々な事情で、事業主の証明を拒否する場合が考えられます。

 ただし、会社が労災申請を拒否した場合であっても、労働者自身が労災補償給付の申請をすることは可能です。

 この場合には、労働者自ら(もしくはその代理人弁護士)が、必要な書類等を収集して申請をすることとなります。

  ここで、労災申請をするにあたって、そもそも事業主(会社)の同意、承諾が必要かと言う点が問題になりますが、この点については、結論から言えば不要です。

 会社は労災申請の拒否権を有しているわけではありませんし、労働災害に該当するかどうか判断をするのも会社ではありません。

 そもそも、労働者災害補償保険法に「事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。」という規定があることから、会社には証明に協力すべき義務があります。

 会社は、労災申請の書類について、(1)負傷又は発病の年月日及び時刻、(2)災害の原因及び発生状況等の証明をしなくてはなりません(労災保険法施行規則12条の2第2項等)。

 会社との間で、会社には協力義務があることを踏まえて交渉し、事業主の証明をしてもらいましょう。

 また、それでも協力が得られないという場合には、近くの労働基準監督署もしくは弁護士等にご相談され、会社にしかるべき対応を要求しましょう。

  交渉を尽くしても、なお事業主の証明を得られない場合には、会社に事業主の証明を拒否された事情等を記載した文書を労災申請書類に添付して提出することで、労働基準監督署が労災申請を受理する場合も多いです。

 労災申請にあたり、会社が労災申請を認めないなどと言って対応を拒否したとしても、手続的な手間は増えることとなりますが、労災の申請自体ができなくなるわけではありませんので、注意して下さい。

 弁護士等の専門家に相談して、労災申請実現のためにしかるべき手段を講じることが必要です。

 労災に関することで、お悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)