長時間労働によるうつ病などの精神障害と労災について

労働者が長時間の時間外労働が続いて,うつ病などを発症した場合に,労災として認められるのでしょうか。

うつ病などの精神障害は,外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのストレス)とそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。

うつ病などの精神障害の発病が仕事による強いストレスによるものと判断された場合に,労災認定されることとなります。 そして,医学的には,長時間労働に従事することも,仕事上の強いストレスとして,うつ病などの精神障害発症の原因となり得るとされています。

では,長時間の時間外労働が続いて,うつ病を発症した場合に,仕事による強いストレスと判断されるのは,どのようなケースでしょうか。

この点について,厚生労働省の基準では,時間外労働が仕事による強いストレスと判断されるケースとして,次の3つを挙げています。

  • 発症直前の1か月におおむね160時間以上,または発症直前の3週間前におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
  • ②発症直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間以上,または発症直前の3か月間連続しておおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
  • ③仕事上,ストレスが発生する他の出来事(転勤による新たな仕事の従事など)と関連して恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)を行った場合

上記➀~➂のいずれかに当てはまるケースの場合には,うつ病などの精神障害の発症が,仕事による強いストレスと評価されることとなります。

ただ,注意しないといけないのは,上記➀~➂のいずれかに当てはまるような仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が強いと評価された場合でも,同時に私生活でのストレス(業務以外の心理的負荷)が強かった場合,その人の既往症やアルコール依存など(個体側要因)が関係している場合には,どれが発症の原因なのか医学的に慎重に判断されることとなります。

また,一般に,うつ病を発症した場合には,自殺念慮が出現することが多いことから,業務による心理的負荷によって,うつ病を発症したのちに,自殺をした場合には,自殺自体が労災として認められることとなります。

 

 なお,従業員が長時間の時間外労働によるうつ病が発症した場合やその後,自殺をした場合などに,会社が進んで労災申請を行うことは,ほとんどありません。

他方で,この分野の労災申請にあたっては,発症前の残業時間や仕事の負荷や内容などを裏付ける資料や証拠を収集するとともに,労災基準に当てはまるように丁寧に書類を作成することが不可欠となります。

また,うつ病などの精神障害が労災として認定された場合でも,労災保険では補償されない後遺障害などの慰謝料や将来の逸失利益などがあり,これらの損害は,会社に対して損害賠償請求する必要があります。

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この記事を書いた人:津田和之弁護士

photo神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)