脳・心臓疾患の労災認定基準の改正について

長時間の時間外労働など業務による過重負荷を原因とする脳梗塞や心筋梗塞などの脳・心臓疾患について、令和3年7月16日に厚生労働省の専門家の報告書がまとめられ、約20年ぶりに、認定基準の改正が行われました。

今回の改正では、業務の過重性の評価について、改正前の基準は維持しながら、新たに認定基準を追加し、長期間の過重業務による脳・心臓疾患の労災認定が認められやすくなっています。

従来の長期間の過重業務の認定基準は、以下のとおりでした。

【労働時間】
➀発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性が強い。

➁月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まる

➂発症前1~6か月平均で月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性は弱い

【労働時間以外の負荷要因】
・拘束時間の長い業務
・出張の多い業務など

今回、新たに長期間の過重業務の認定基準に追加されたのは、以下の内容です。

◎労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定とすることを明確化
 これまでの基準でも、労働時間だけではなく、労働時間以外の負荷要因を総合考慮することとなっていましたが、今回の改正により、上記➀の水準に至らない場合でも、これに近い時間外労働がある場合は、一定の労働時間以外の負荷が存在すれば、業務と発症との関連が強いと評価することを明示しました。

 ここで注意が必要なのは、あくまでも、上記➀の水準に至らない場合に、労働時間以外の負荷を考慮するというものであり、上記➀の水準に至っている場合は、業務と発症の関連性が強いと評価されることは変わっていません。

◎労働時間以外の負荷要因を見直し
 労働時間以外の負荷要因として、「勤務間のインターバルが短い業務」、「身体的負荷を伴う業務」などが評価対象として追加されました。

長時間の時間外労働など業務による過重負荷を原因とする脳梗塞や心筋梗塞などの脳・心臓疾患については、高次脳機能障害や運動能力の低下など。重篤な後遺障害が残るケースが多くあります。

他方で、これらについては、使用者側だけでなく、労働者側も労災という認識がないままに見逃されているケースが多いと思われます。

そして、長時間の時間外労働など業務による過重負荷を原因とする脳梗塞や心筋梗塞などの脳・心臓疾患の労災認定については、専門的な知識と経験が多く必要なります。

当事務所では、この分野の労災認定について、重点的に取り組むとともに、数多くの経験と知識を有しています。

長期間の時間外労働などにより脳・心臓疾患を発症し、将来に不安をお持ちの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

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