新型コロナウイルスのワクチン接種を巡る法的問題について

新型コロナウイルスのまん延が続いており、緊急事態宣言が再延長される見通しとなっています。

こうした中で、新型コロナが収束したと言えるのはどのような状況になったときでしょうか。
新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)を参考にすると、新型コロナが弱毒化し、季節型インフルエンザ並み以下になるか、あるいは集団免疫を獲得したときかとされています(特措法第21条)。

現時点では、弱毒化の兆候はないので、集団免疫獲得を期待するしかありません。
しかし、自然感染による方法は、スウェーデンでうまくいかなかったことから、結局、ワクチンの接種に頼るほかはないことになります。

ワクチン接種については、予防接種法という法律があり、2020年の臨時国会で一部改正され、新型コロナのワクチンにも適用されるようになった。

新型コロナワクチンの予防接種は臨時の予防接種(法第6条第1項)として行われることとなります。
そして、新型コロナワクチンの予防接種は、厚生労働大臣が都道府県知事を通じて、市町村長に指示を行うという体制となっています。
実施主体は市町村長ですが、都道府県知事は市町村長に必要な協力を行うなど、国を挙げての取り組みとなります。

新型コロナワクチンの予防接種は、法第6条第1項の予防接種とみなされることから、接種勧奨の対象となり、対象者は予防接種を受ける努力義務があります。
あくまで努力義務なので、アレルギー体質であるなどにより、接種を希望しないのであれば受けなくてもよいとされています。
ただ、集団予防の観点から行われるものであるので、多くの人が受けることが望ましいといえます。

ここで、気になるのが副反応による健康被害ですが、ワクチン接種後、副反応の症状が出たときは、医師等は厚生労働大臣に報告を行う義務があります。
一般に、予防接種においても、副反応の健康被害は一定の割合で不可避的に生ずるとされています。

参考までに、インフルエンザワクチンの予防接種の副反応として、厚生労働大臣に報告すべき症状とその発症期間として定められているものとしては、アナフィラキシー(接種後4時間)、肝機能障害(接種後28日)、間質性肺炎(接種後28日)などがあります。

それでは不幸にして副反応による健康被害が出てしまったときの補償はどうなっているのでしょうか。
新型コロナワクチンについては、医療費・医療手当、障害年金、および死亡一時金などが給付されることとされています。

医療費については、診察や薬剤、入院費などの自己負担分が補填されます。
医療手当は医療を受けた人に対する給付金で、例えば8日以上入院した場合は月額3万7千円の支給が受けられます。

障害年金は一番重い1級障害となった場合に、年額505万6800円です。
障害の程度は1級から3級まであるが、3級でも労働が著しい制限を受けるといった水準の障害であり、一時的な症状の発症程度では年金支給の対象とはなりません。

最後に、死亡時に給付される一時金ですが、死亡一時金は死亡した方の配偶者、子、父母等の順で給付を受けることとなります。
一時金の金額は4420万円とされています。

そして、これらの給付金を受けるためには、疾病の発症が予防接種によるものであるとの厚生労働大臣の認定が必要とされています。

今後、多くの国民にワクチン接種が進む中で、副反応による健康被害が、不幸にして、一定の割合で、接種を受けた国民に生じることは、不可避だと思われます。

ワクチン接種も健康被害など法的トラブルでお悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

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