新型コロナウィルスの後遺症による解雇について

新型コロナウイルス感染が急拡大する中、症状が回復したように見えても、その後、息苦しさや体の痛み、脱毛、抑うつ症状など後遺症の問題が深刻化しています。
新型コロナウイルスは、多様な症状が続くのが特徴で、体調悪化から寝たきりとなり職場を解雇されるケースも出てきています。

今日は、会社は、新型コロナウイルスの後遺症などを理由に、従業員を解雇することができるのかについて考えてみたいと思います。

従業員を解雇するためには、合理的な理由が必要となります(労働契約法16条)。
そして、一般に、業務上の傷病以外の傷病(「私傷病」といいます。)に起因する労働者の労務提供不能は、解雇の合理的な理由となるとされていますが、その前提として、会社が解雇を言い渡す上でその回避措置を講じたか否かが、解雇の合理性判断の重要な基準となります。

このような場合に、会社によっては、解雇を回避するために、一定期間、治療に専念できる期間(「私傷病休業期間」と呼んでいます。)を設け、この間に傷病が治癒すれば復職できるような措置を講じています。
ただ、このような制度を設けている会社は、大企業であり、中小企業にはそのような制度はありません。

それでは、このような制度が設けられていない場合、即解雇ということになるかというと、判例はそのようには考えず、傷病の治癒の見込み、労務提供できないことによる同僚への影響の有無・程度、会社の規模(従業員が多ければ代替は容易であるなど)・経営状態など諸般の事情を考慮して、使用者は解雇を我慢すべきであると判断したときは、にもかかわらずなされた解雇は無効とされているようです。

次に、労働者が、以前の部署の業務に戻ることはできないが、別の部署の業務であれば、業務遂行が可能な場合に、労働者は、業務遂行が可能な部署への配置転換を申し入れることはできるのでしょうか。

この点については、一般的には、使用者は解雇に先立ち、少なくとも労働契約の範囲内で、従業員が就労できる職務がないか探す義務はあると思われます。

私傷病を理由とする休職命令に関する事件で、最高裁は次のような判断を示しています。
病気で現場監督はできない、事務ならできるから仕事を変えてくれと申し出てきた労働者に対し、使用者である建設会社はいきなり休職を命じたのですが、この労働者は現場監督に職務を特定して雇用された者ではないから、申し出のあった事務職も含めて労働契約の範囲内で就労可能な職務を探す義務が会社にはあった、この義務を尽くさないでいきなり休職を命じたのは違法であると判断しています。

この考え方を参考にすると、就労可能な部署への配置転換を考慮することなく会社が解雇したのであれば、解雇権の濫用と判断されることもあります。

不当解雇など労働トラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

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