タイムカードなどのない未払残業代の請求の事例

ある会社の営業職の方が、月100時間近い残業をしていましたが、会社からは全く残業代が支払われていませんでした。

その会社にはタイムカードなどがなく、会社での勤怠管理は行っていませんでした。
ただ、相談者に確認したところ、会社の事務所に出入りする際に、カードでセコムのセキュリティを解除設定をしていたということでした。

相談後は、残業時間を確定するため、セコム社に対して、弁護士法23条に基づく照会制度を利用して、事務所の入退所の時間やカード番号などセキュリティシステムのデータの提供を求めました。

ただ、セコム社からは、契約者である会社の了解がない限り、データの提供はできないという回答がありました。

そこで、会社に対して、残業代を請求するとともに、セコム社のセキュリティシステムのデータの開示について協力を求める内容証明郵便を送付しました。
その後、会社側に代理人がついて、セコム社のデータ入手について協力が得られ、データが開示されました。

また、本人が記載していた営業日報についても開示を求め、開示されました。

ただ、セコム社のセキュリティシステムのデータは、朝、出勤した際にシステムを解除する際には、カードを通すため、朝、いつだれが最初に事務所に出勤したかは特定することはできました。
他方で、夜、退勤する場合には、システムを設定するボタンを押すだけなので、社員が最後に事務所を出た時間はわかりますが、誰かは特定することはできませんでした。

また、営業日報についても、外回りの営業の内容は記載してありますが、事務所に戻ってからの作業内容や退勤した時間は記載されていませんでした。

その会社は、親子関係の社長と専務のほか、事務の女性を除くと、社員は2名で、1名は当時見習いであったため、基本的には、毎朝、一番に相談者が出勤し、最後に退勤していたということでした。

そこで、相談者本人から、外回りの営業から事務所に戻った後、具体的にどのような作業をしていたか、その作業にどの程度の時間を必要としたか、それが、セキュリティシステムのデータと矛盾がないかを、営業日誌とも照らし合わせながら、一日ごとに積み上げて、残業時間を算出しました。

そのうえで、会社側に対して、過去2年間にわたって、1月100時間程度、合計500万円程度の残業代を請求しました。

これに対して、会社側が支払を拒絶したため、労働審判の申し立てを行いました。

労働審判では、第1回目から、残業時間の裏付けとなる詳細な資料を提出し、主張立証したところ、1回目で、会社側が450万円程度の解決金を支払うことで和解しました。

この事件では、残業時間を明確に立証できるものが十分にない中で、本人の聞き取りや資料などから、一日一日の残業の際の作業内容や時間を詳細に積み上げて、残業時間を矛盾なく立証する作業を丁寧に行うことが重要だったと思います。

その結果、請求額の約9割の未払残業代を支払うことで、それも1回目の労働審判でスピード解決をすることができました。

残業代の未払や不当解雇など労働トラブルでお悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

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