交通事故における後遺障害の逸失利益の算定について

後遺症イメージ

交通事故の被害者に後遺障害が残った場合には、後遺障害の等級に応じて、将来の逸失利益を損害賠償として請求できます。

今回は、逸失利益の算定について、基本的なことを説明したいと思います。

逸失利益の計算方法

➀基礎収入×➁労働能力喪失率×➂労働能力喪失期間の中間利息控除(ライプニッツ係数[下記参照])

「ライプニッツ係数」とは

ライプニッツ係数とは、交通事故で後遺障害や死亡といった深刻な損害を負ったとき、被害者が加害者に対して請求する逸失利益の金額を出すための指数です。

将来受け取るはずだった収入から中間利息を差し引いて、現在の価値に置き換える際に用いられます。

2020年4月の改正民法によって、法定利率とともにライプニッツ係数も変更され、現在は年利3%となっています。

次に、計算式の➀~➂について、順に説明します。

➀基礎収入

原則として事故前の現実収入を基礎とします。
通常は、事故前年の所得証明書や源泉徴収票の所得額となります。
ただ、現実収入額が賃金センサス(下記参照)の平均額を下回っていても、将来、平均賃金程度の収入を得る蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入と算定される場合もあります。

「賃金センサス」とは

毎年実施されている政府の「賃金構造基本統計調査」の結果に基づき、労働者の性別、年齢、学歴等の別に、その平均収入をまとめた資料をいいます。

賃金センサスは、交通事故において、主婦の方の休業損害や後遺症を負った場合の逸失利益を計算するためなどに活用されています。

➁労働能力喪失率

労働能力の低下の程度については、後遺障害の等級に応じて、労働能力喪失率表が定められていますので、それが基本となります。
例えば、後遺障害の等級が14級であれば、労働能力喪失率は5%、12級であれば14%となります。
そのうえで、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の就労状況などを総合的に判断して評価します。

➂労働能力喪失期間の中間利息控除(ライプニッツ係数)

労働能力喪失期間の始期は、症状固定日となります。
未就労者の場合は、原則18歳ですが、大学進学を前提とする場合は、大学卒業時となります。
労働能力喪失期間の終期は、原則として67歳となります。
ただ、症状固定時の年齢が67歳を超える場合は、原則として平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。

(高校を卒業してすぐ就職した労働者が交通事故で後遺障害が残った場合の遺失利益についての考え方は下記の記事をご覧ください)

始期と終期から労働能力喪失期間を算出したうえで、その期間の中間利息の控除を行います。
これは、後遺障害の逸失利益は、全額の一時払いとなるため、中間利息の控除を行う必要があるからです。
実務では、中間利息の控除は、ライプニッツ式で行われています。
中間利息は、従来は年5%でしたが、令和2年4月以降に発生した交通事故は、年3%となっています。

では、上記の計算式によれば、令和3年4月に発生した交通事故で、被害者の症状固定時の年齢40歳、事故前の前年所得が500万円、後遺障害が12級の場合であれば、逸失利益の額は、いくらになるでしょうか。

➀基礎収入500万円×➁労働能力喪失率12%×➂労働能力喪失期間の中間利息控除(ライプニッツ係数)18.3270(労働能力喪失期間27年間)=1099万6200円

となります。

ただ、以上は、基本的なルールに基づいた算出方法による逸失利益の額ですので、必ず、このとおりの額になるわけではないということに留意ください。

なお、当事務所では、交通事故の被害者の方は、初回法律相談と無料としています。

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