定期金による損害賠償~交通事故~

交通事故で、被害に遭った場合に支払われる損害賠償は、全額一時払いが原則とされています。

そのため、交通事故による後遺障害に伴う逸失利益については、将来における得べかりし収入額を、中間利息控除をして現在価値に引き直した金額により、一時金として賠償を求めることが一般的です。

例えば、後遺障害1級の被害者が、症状固定時に30歳で、年収500万円の場合、就労可能期間を67歳とすると、逸失利益の賠償額は、500万円×16.7113(37年間のライプニッツ係数)×100(労働能力喪失率)=8355万6500円となり、これを一括で受け取ることとなります。

これに対して、定期金払いの場合は、毎年500万円が37年間支払われることとなり、この場合、賠償額の総額は、1億8500万円となり、一時払いと比較すると、賠償額は倍以上になります。
ただ、定期金払いの課題としては、加害者側の支払いが長期間に及ぶため、確実に行われるのか、被害者が67歳までに死亡した場合に、その時点で打ち切られるのかどうかということが挙げられます。

では、後遺障害に伴う将来の逸失利益を定期金で支払ってもらうことは可能でしょうか。
この点について、過去の判例では、被害者側が、一時金による支払を求める申し立てをしていた場合には、定期金による支払を命じることができないとされています。

そして、被害者側が、後遺障害に伴う将来の逸失利益を定期金で支払うことを求めることは認められるのか、また認められる場合にその支払いの終期はどうなるかというなどについて、最近、最高裁の判決がありました。

この判決によると、交通事故の被害者が定期金賠償を認めている場合に、「不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるとき」の要件の下で、後遺障害の逸失利益が定期金賠償の対象となることが認められました。

これは、定期金による賠償であれば、予測した損害額と現実化した損害額との間に大きな乖離が生じる場合には、民事訴訟法117条によってその是正を図り、実質的な損害の公平の分担を実現することも可能であるということが背景にあると思われます。

また、定期金賠償の賠償の終期については、特段の事情がない限り、就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金賠償の終期とすることを要しないとしました。
すなわち、逸失利益について定期金賠償にした場合に、被害者が就労可能期間(67歳)よりも早く死亡した時でも、その時点で打ち切られるのではなく、67歳まで定期金賠償を受けとれることを認めました。

定期金賠償の方が、被害者にとってメリットのあるケースとしては、被害者が若年者で後遺障害が重篤な場合であって、定期金の支払いを保険会社が行うなど、長期間の定期金払いの確実な履行が期待できる場合が考えられます。

この判決は、後遺障害逸失利益についての定期金賠償の可否並びにこれが認められる場合の要件及び終期という実体上の法律問題について、最高裁が初めて判断を示した重要な判例であると認められます。

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