行方不明の建物賃借人(借家人)への対応について(契約の解除)

マンションなどの建物の賃借人が、家賃を滞納したまま行方不明になった場合に、どのように対応するのが良いのでしょうか。

このような場合、まずは、行方不明の賃借人との賃貸借契約を解除する必要があります。
ただ、解除の意思表示は、相手方に対してその意思表示が到達する必要がありますが、行方不明の場合には、それができません。

そのため、次のような方法を取ることとなります。

1. 行方不明者への解除手続

 (1) 解除の意思表示の到達

 民法では、意思表示の相手方の所在を知ることができないときには「公示の方法」によって意思表示をすることができるとされています(民法98条1項)。
 この方法は、相手方の所在が分からないことが要件ですので、まず、相手方の住所地に通知しても所在不明で通知書が戻ってくることを証明するため、借家人の住所地に、滞納賃料を相当期間内に支払うことを催告し、相当期間内に支払がない場合には賃貸借契約を解除する旨を記載した解除通知書を配達証明付内容証明郵便で発送し、同内容証明郵便が所在不明で戻ってきてから手続を行います。

 (2) 「公示の方法」

 公示の方法は、公示送達に関する民事訴訟法の規定に従って、借家人の最後の住所地(当該賃貸建物の住所地)を管轄する簡易裁判所に申立てをすることによって行います。

 簡易裁判所に申し立てる際には、裁判所が本当に相手方の住所が不明であるのかどうかを審査するために、相手方の住民票又は不在籍証明書1通、契約解除の内容証明郵便が所在不明で返却されたものの写し1通と、相手方が所在不明であるか否かの賃貸人側の調査報告書1通と、公示による意思表示を行うために、相手方に対する契約解除の通知書の計3通を提出します。

 簡易裁判所が審査の結果、相手方の所在が不明であると認められたときは、簡易裁判所に提出した契約解除の通知書が裁判所の掲示場に掲示され、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも1回掲載することにより行います。

 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した日に相手方に到達したものとみなされます。これで賃貸借契約解除通知が相手方に到達したものということになります。

 契約解除後の建物の明け渡しについては、後日、掲載します。

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