離婚調停とDNA鑑定

離婚調停において、夫側から、婚姻期間中に生まれた子どもは自分の子どもではない可能性があるので、DNA鑑定をして欲しいという申し出がある場合があります。

この場合、夫側は、妻の不貞などを疑い、自分の子どもではないのであれば、養育費を支払いたくない、また妻に対して慰謝料を請求したいという主張をするものと思われます。

離婚調停におけるこのような夫の申し出に対しては、妻側が応じるかどうかは基本的には自由です。
ただ、拒絶をした場合、夫側が離婚や養育費の支払いには応じないということで、離婚調停が不調になる可能性があります。

他方で、実際のDNA鑑定は、綿棒で「口腔粘膜細胞」を採取する方法で、ほとんど子どもへの負担もなく、乳幼児でも簡単に行うことができます。

そのため、私がこれまで妻側の代理人として離婚調停で、DNA鑑定を求められた際には、こちらに不貞などの事実がないケースでは、夫側の疑念を払しょくするためにも応じることもありました。

DNA鑑定の費用は、基本的には、申し立てた側が負担することとなり、離婚調停におけるDNA鑑定は、裁判所を通じて行いますので、信頼できる機関に依頼することもあり、費用は10万円程度となります。

また、DNA鑑定の方法は、髪の毛や血液などではなく、上記のとおり、綿棒で「口腔粘膜細胞」を採取する方法で行われ、結果がでるまでには、概ね3週間から1か月程度かかります。

そして、DNA鑑定の結果、子どもと父親が血がつながっていない、すなわち生物学的に親子ではないと判明した場合にはどうなるのでしょうか。

まず、この子どもが婚姻期間中に生まれたのであれば、妻が不貞をしていた可能性があり、それが離婚原因になるとともに、妻に対して慰謝料を請求することも可能になると思います。

他方で、夫と子どもの親子関係については、簡単にはいかない問題があります。
この点、法的に夫と子の親子関係を否定するためには、夫は嫡出否認訴訟を提起することができます。
ただ、嫡出否認訴訟を提起できるのは,夫が子どもの出生を知ったときから1年以内となっていますので、これを超えると嫡出否認訴訟は提起することはできません。

嫡出否認訴訟以外に親子関係を否定する方法としては、親子関係不存在確認訴訟を提起することが考えられます。
しかし、判例では、夫と民法772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,夫と妻が既に離婚して別居し,子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても,親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存否を争うことはできないとしております。

最高裁は,生物学的な親子関係よりも,長年子供として社会生活を送ってきたという事実関係を重視したことになります。

確かに,子供として育ってきたのに,ある日突然,それまで存在するものと信頼してきた法律上の父子関係が存在しないことになることは,夫婦・親子関係の安定を破壊するものとなり,子が生まれたら直ちにDNA検査をしないと生涯にわたって不安定な状態は解消できない事になりかねません。

しかしながら,子供の意思が確認できない年齢の場合はともかく,成人して子供の意思もはっきりしている場合に,果たして生物学的な血縁関係がなくても「親子」で良いのかとの疑問は拭えません。

これらによれば、夫側は、DNA鑑定で、生物学上親子ではないことが明らかになったとしても、法律上の親子関係は存在するため、養育費の支払いを拒むことはできないと考えられます。
この点について、夫の立場に立つか、子どもの立場に立つかで意見が分かれると思います。

離婚や親子関係でお悩みの方はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

神戸山手法律事務所 弁護士 津田和之 電話 078-335-5122 メール kobeyamate.law@gmail.com

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