離婚時における財産分与と確定拠出年金②
近年、企業では、従来の退職金を見直し、確定拠出年金を導入する企業が増加しています。
では、夫婦の一方が確定拠出年金を有する場合、夫婦が婚姻期間中に築き上げてきた財産として、財産分与の対象となるのでしょうか。
前回説明したとおり確定拠出年金については、離婚時年金分割の対象外となるため、財産分与の対象となるかは離婚する夫婦にとって重要な問題となります。
「企業型」確定拠出年金については、各企業が、従業員に対する退職金制度の一環として採用しているものであり、毎月拠出される掛金は、退職金の前払いの性格を有しています。
この点、退職金は、賃金の後払い的な性格をもち、夫婦の一方が取得する退職金の形成には、他方配偶者も貢献していると考えられるため、原則として財産分与の対象財産となります。
したがって、企業型確定拠出年金として各個人別に管理・蓄積された資産は、一時払いの退職金と同様に、財産分与の対象となると考えられています。
では、企業型確定拠出年金が財産分与の対象とされる場合、どのように評価されるのでしょうか。
確定拠出年金制度では、年金資産は個人別に管理され、残高の把握は、運営管理機関(銀行、証券会社)に問い合わせることにより容易に行うことが可能です。
また、加入者に対し、年に1回から2回、「お取引状況・残高のお知らせ」が発行され、現時点での資産評価額や、毎月拠出している掛金額の累積合計金額などが明示されます。
そこで、これらの数値を用いて、基準時における評価額を決定することになります。
具体的に対象となる額は、基準時における年金資産残高(評価額)の婚姻期間に対応する額であると考えられます。
これに対し、「個人型」確定拠出年金については、財産分与の対象となるか否かについて見解が分かれており、扱いが確立しているとは言えません。
ただ、個人型年金は、個人が掛金を拠出したものであり、預貯金と同様に財産分与の対象となるとする考え方が有力だと思います。
離婚時の養育費や財産分与など夫婦間の法的なトラブルでお悩みの方は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。