遺言書の付言事項

遺言には、その記載する内容として大きく二つに分けることができます。

一つは法律上効力を持たせる為に記載する「法定遺言事項」です。

これは、通常遺言として書く法的効力がある内容です。
具体的には「相続分の指定」「遺産分割方法の指定」など財産の処分・分配に関すること、「子の認知」「相続人の廃除」など相続人に関することがあります。

これらの記載がないと、遺言書としての意味を成さなくなりますので、遺言書を作成する際には「法定遺言事項」を記載する必要があります。

もう一つは、法的効力を直接発生させることを目的としない事項を記載する「付言事項」です。
この「付言事項」には、例えば、家族へのメッセージや、葬儀、納骨に関する希望などを記載することになります。

付言事項は法的効力を伴いませんが、遺言に関する被相続人の想いを伝えることで、被相続人の意思が尊重されやすくなります。
その結果、相続トラブルを回避できたり、円満な相続ができたりするケースも多くなります。

では、「付言事項」として、具体的にどのようなことを記載すれば良いのでしょうか。

まず、最初に考えられるのは、生前お世話になった人や家族に対する感謝の気持ちを伝えることです。
この場合には具体的に誰に対して何を感謝しているのかを伝ええることが大切だと思います。

次に、遺言内容に関する経緯を書くことも大切だと思います。私は個人的にはこれが最も大切だと思っています。

どうしてそのような遺言をするに至ったのか、その想いを伝えることです。

相続では少なからず不平不満が出ます。それが大きな相続トラブルへと発展する恐れもあるのです。

通常、こうしたトラブルが起こるのを防ぐために遺言を作成するのですが、その遺言内容に不満を持つ人が現れると折角の遺言が逆効果になることもあります。

そのため、なぜそのような遺言の内容に至ったのか、その経緯を書いておくことも重要です。

特に、子どもの間で遺産の取り分に差を付ける場合や遺留分を侵害するような場合には、それに至った理由やメッセージを残しておくことが大切だと思います。

私が遺言書の作成を依頼を受けたケースですが、依頼者は、長年、身の回りの世話や介護をしてれた長女に全財産を渡したい。他方で、長男は住宅購入の際など多くの金銭的な支援をしてきたにもかかわらず、病気になってからは何もしてくれなかったので、長男には財産をやりたくないという意向を持っていました。

ただ、子どもの場合には、法定相続分の2分の1が遺留分としてありますので、上記のケースでは、遺言書の内容にかかわらず、長男が遺留分減殺請求をすれば、遺産の4分の1は渡さないといけません。

そこで、依頼者と相談の上、遺言書の「付言事項」として、どうして長女に財産を全て渡すのかという思いをメッセージとして残しました。

このケースでは、依頼者の死後、長男は、付言事項を読み、生前の親の気持ちや親からのメッセージを目の当たりにして、結局、遺留分減殺請求は行いませんでした。

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