株主代表訴訟とは

取締役の違法な行為によって会社が損害を受けた場合には、会社が取締役に対して損害賠償請求をするのが本来の姿です。
ただ、会社が取締役の違法な行為を放置し、損害賠償の請求を怠っている場合があります。

会社法では、このような場合に、会社に代わって、株主が取締役の請求を追及する「株主代表訴訟」という制度が設けられています。

株主代表訴訟とは、会社が取締役の責任を追及する場合に、株主が原告となって訴えを提起する制度です(会社法847条以下)。

本来、会社が取締役の責任を追及する場合には、監査役設置会社では監査役、監査役設置会社以外の会社では代表取締役か株主総会、取締役会が定める者が会社を代表します。
しかし、会社の役員が責任追及をする場合には、馴れ合いが生じる危険性があるため、株主が直接会社のために取締役に対し訴えを提起することが認められています。

株主が当該訴えを提起するには、まず、会社に対して、一定の方式で取締役の責任追及をする訴えを提起することを請求する必要があります。
そして、会社がその請求の日から60日以内に訴え提起をしないときに、当該株主が会社のために訴え提起することができます。

なお、株主代表訴訟は、株主自身の直接的な経済的利益に関する訴訟ではないため、訴額は一律1万3000円と定められています。

また、会社が株主の請求に応じて訴えを提起した場合でも、馴れ合い防止のため、当該株主は、原告側に共同訴訟参加することができ、株主が訴え提起した場合には他の株主又は会社が原告側に共同訴訟参加することができます。

株主代表訴訟において、訴訟上の和解をする場合には、会社が和解の当事者や利害関係人になっていない場合には、裁判所が会社に対して和解の内容を通知し、当該和解に異議があれば2週間以内に異議を述べるべき旨を催告しなければならないとされています(会社法850条2項)。

会社が期間内に異議を述べない場合には、会社がその内容の和解を承認したとみなされ、会社にも確定判決と同様の効果が及びます。
他方、会社が異議を述べたときは、仮に原告と取締役とがその内容で和解したとしても、会社は、会社又は他の株主との関係において、再訴禁止効が生じないと規定されています(会社法850条1項本文)。

株主代表訴訟の判決の効果は、会社に対しても及びます。
株主が敗訴した場合、株主は、悪意があった場合に限り、会社に対して損害賠償責任を負います。

株主が勝訴した場合、当該株主は訴訟に関した支出した費用や又は弁護士費用の範囲内で相当と認められる額を会社に請求することができます(会社法852条1項)。

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