交通事故の「異時事故」の損害賠償責任について

異時事故とは,別の日時に発生した事故のことをいいます。

 

例えば,Aが,5月1日に車を運転していて,脇道から飛び出してきたB車に衝突されました。(第1事故)。

その1カ月後,Aが車で信号待ちをしていたところ,C車から追突されました(第2事故)。

 

Aは第1事故によって頸椎捻挫と腰椎捻挫によって首周りの痛みや手のしびれ,腰痛などを訴えて通院治療中に第2事故が発生し,第2事故の後に,これらの症状が悪化して,後遺障害が残ってしまいました。

 

このように,2個以上の事故が別の時に発生した場合を異時事故といいます。
異時事故の場合,第2事故以降のAの症状の悪化,後遺障害について,誰にどのくらいの損害賠償請求ができるのでしょうか。

 

Aにとっては,2つの事故により症状が悪化して,後遺障害が残ったので,BとCの両方に対して,連帯して損害賠償請求をしたいところです。連帯責任が認められると,Aは,B,Cのどちらに対しても損害賠償額の全額を支払うよう請求できるので,一方が無保険や無資力の場合でも,安心です。
一方,BとCからしてみれば,連帯責任ではなくて,自分の起こした事故による傷害の部分しか責任を負いたくないと思うことでしょう。

 

裁判例では,3カ月以内に起こった2つの事故において被害者が同一部位に受傷した事案で,「後遺障害は,双方の事故による傷害に基づくもの」として,加害者側に連帯責任を認めた例があります(東京地裁平成21年2月5日)。

 

また,その逆に,1週間以内の2つの事故に遭い,後遺症が残った事案では,頚部の受傷部位は共通しているが,事故態様が違うこと,第2事故後の症状に対する第1事故のの寄与度は非常に小さいと考えられることなどを考慮して,連帯責任を認めませんでした。この裁判では,第1事故,第2事故それぞれの加害者に5:95の割合で個別の賠償責任を認めています(大阪地裁平成26年5月13日)。

 

このように,異時事故による傷害や後遺障害の損害賠償責任は,事故態様や傷害の部位,各事故の傷害への寄与度(影響の強さ)などの細かい認定に基づいて行われます。医師による医学的な見地も必要となります。

 

被害者救済の面からは連帯責任が認められるとよいのですが,加害者の負担は重くなるため,公平の観点からいつでも認められるわけではありません。

 

交通事故の被害者となり,お悩みの方は,ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。

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