河川内での子どもの事故についての国家賠償請求

今日は、少し前に、河川内で遊んでいた子どもがコンクリートブロックで重傷を負うという事故についての国家賠償請求事件を担当して、最終的に裁判上の和解をして解決した事件を紹介したいと思います。

この事故は、当時、小学生の子どもが、夏休みに、友達と一緒に、家の近くの河川で遊んでいたときに発生した事故でした。

河川内の小路に、工事のためにコンクリートブロックが置いてあり、一緒に遊んでいた子どもがその上に乗っていたところ、そのコンクリートブロックが突然動いて、近くにいた子どもが足を挟まされ、両足の足の指が潰れるなどの重傷を負うという事故に巻き込まるというものでした。

子どもの両親から依頼を受けて、河川を管理している都道府県に対して、国家賠償法2条の河川の管理瑕疵を理由に損害賠償請求の訴訟を提起しました。

この事件での争点は、河川管理者である都道府県知事に「管理の瑕疵」があったかどうかです。

この点、国家賠償法2条は,「道路,河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは,国又は公共団体は,これを賠償する責に任ずる。」と定めています。
「管理の瑕疵」とは,公の営造物が「通常有すべき安全性を欠欠き,他人に危険を及ぼす危険性のある状況である」ことをいい,具体的にこのような瑕疵があったとみられるか否かは,「当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すべきもの」とされています。

そして、本件において河川管理者の管理瑕疵については、主に次のような主張をしました。
①本件のコンクリートブロックは、上流から漂着する等自然に置かれたものではなく、河川管理者によって本件事故現場に人為的に設置保管されていたものであること
②本件事故は本件事故現場にあるコンクリートブロックが動くことにより発生したものであること
③本件事故現場は子供も含めて人が自由に出入りできる場所であり、看板、ロープやネットなどによる立入禁止等の安全措置は全く講じられていなかったこと
④本件事故現場付近は、以前より周辺地域の子どもらの遊び場となっていたことなどが認められる。

そして、上記①~④を踏まえれば,河川管理者としては,河川区域内である本件事故現場にコンクリートブロックを設置保管する場合には,子供らが本件石材付近で遊んだりすること及びそれにより本件石材が動くことにより本件のような事故が発生することは十分に予見可能であった。

したがって,河川管理者としては,本件のような事故の発生を予見したうえで,本件事故現場付近に看板,ロープやネットなどにより立入禁止等の安全措置を講じることにより,本件事故現場やコンクリートブロックに近づけないようにするなど,コンクリートブロックが動くことなどによる発生する事故を防止する法的義務を有するとともに,上記のような安全措置を十分に講じていれば,本件事故を未然に防げたことは明白である。

そうすると,河川管理者が上記のような安全策を講じることなく,本件事故現場に無造作にコンクリートブロックを放置したままにしていたことは,「通常有すべき安全性を欠き,他人に危険を及ぼす危険性のある状況である」と認められ,河川管理者には,河川区域内である本件事故現場の管理に「管理の瑕疵」があったといえる。

この事件では、都道府県側は、管理瑕疵はないとして、約3年近く争いましたが、最終的には、こちら側の主張が認められた形で、都道府県が数千万円を支払うということで裁判上の和解をして解決をしました。

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