後遺障害の加重~後遺障害は1度しか認定されないのか

交通事故による後遺障害とは、症状固定した時点で、これ以上治療しても直らない、身体に存する障害となっています。
つまり、自賠責で認定された後遺障害は、「一生回復しない」ということが前提となっています。

したがって、交通事故により受傷した頸椎捻挫により、一度、後遺障害として14級で評価されると、「永久残存性」なのだから、その傷害は死ぬまで続く。
そのため、その後、再度、交通事故により頸椎捻挫を受傷したとしても、すでに評価しつくされているとして、後遺障害が認定されないことになる。
もし、同一部位でより高度の障害が発生した場合、12級と評価された場合には、新たに加わった部分(12級と14級の差額)だけが評価の対象になり、過去に認定された重なり部分は控除される。
これが自賠責の基本的な考え方となっています。

ただ、後遺障害は、永久には残存しないが、もっと短期に、たとえば数年ときに10数年にわたってしか症状が残存しないものがあります。
たとえば頚椎捻挫がその代表例であり、こうしたものは「永久残存性」がないことから、実務では、多くの場合は、労働能力喪失期間を3年から5年ていど(14級の場合)に限定しています。

こうした中で、問題となるのは、加重の場合を除いて、後遺障害の「永久残存性」から、1度評価されると再評価されないという結論を、頚椎捻挫などの「永久残存性」のない後遺障害についてまで及ぼしていいのかということです。
すなわち、労働喪失期間が3年ないし5年なら、前回の事故から今回の事故までにかなりの期間が経過していれば、既存障害の影響がないと判断できるケースもあり得るはずとも考えられます。

しかし、自賠責実務は1度評価したら2度と評価しないというスタンスを変えてはいません。
他方で、裁判実務においては、今回の事故当時に、既存障害の症状が、既に治癒していたり改善していると認定される場合には、今回の事故を原因とする「後遺障害による損害」(逸失利益、後遺障害慰謝料)が認められることがあります。
また、既存障害の症状が改善していないと認定される場合には、今回の事故の「後遺障害による損害」が否定されることもありますが、素因減額により一定割合を減額されたうえで損害額の一部が認められることもあります。

したがって、一度、交通事故で後遺障害の認定を受けた後に、再度、交通事故に遭われたケースは、弁護士に相談することをお勧めします。(詳しくは「交通事故でお悩みの方へ」のページをご覧ください)

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