解雇された社員による会社のデータ削除

勤務不良で社員を解雇したところ、解雇を逆恨みした社員が会社を辞める際に、これまでコンピューターに入力した様々なデータを全部消去してしまったという事例について考えてみたいと思います。
このような事例の場合に、会社は、この社員を業務妨害で訴えたり、損害賠償を請求することはできないのでしょうか?
刑事・民事の両面から検討する必要があります。
刑事上の責任
まず、この社員が故意にコンピューター内のデータを消去した場合、この行為は電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法243条の2)に該当し、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることになります。
問題は故意にデータを消去したのか、機械のトラブルや過失によって消えてしまったのか、ということです。
この犯罪は故意犯なので故意に行ったのでなければ犯罪にはなりません。
この様な内心の問題は、自白を除いては直接的な証拠はなく、間接的・客観的な事実を積み重ねて立証することになります。証拠として考えられるのは、
- 解雇された際の言動・態度、真実
- 機械のトラブルが発生したか否か
- 今回のデータ消去が1回の誤作動で発生しうるものか否か、
- データ消去の時間とアリバイ
- 更には他の従業員のアリバイ
等です。
これらを調査をして、その結果これが、故意によるデータ消去でしかもこの社員にしか行えなかったと合理的に推測できるならば、この社員を告訴するべきでしょう。
民事上の責任
次に、民事上の責任ですが、この社員が故意又は過失によりデータを消去し業務上の損害が発生したのであれば、民法709条に基づき、その損害の賠償を請求することができます。
では何が損害といえるのかですが、まずデータを再入力するための人件費等は当然損害といえます。
また、それ以外にデータ消去により休業を余儀なくされたのであれば、過去数ケ月分の収入を基に休業期間の得られたであろう利益・収益を損害として請求できるでしょう。
ただ、この損害の立証はなかなか難しい面があるため、概算にならざるを得ない面があると思います。
このような事態に至らないよう、トラブルを伴う解雇にしないことが大切です。そのために知っておくべきことがあります。詳しくは不当解雇を神戸の弁護士が解説|解雇が無効となる条件・判例・解決事例がわかる総合ガイドのページをご覧ください。
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この記事の執筆者:津田弁護士

神戸山手法律事務所で弁護士に従事する傍ら、関西学院大学 大学院司法研究科教授も務める。また、役職として、加古川市コンプライアンス法務アドバイザー (2013年4月~)、西宮市法務アドバイザー (2015年4月~)、兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー (2012年6月~)、加古川市審理員 (2016年4月~)、稲美町審理員(2018年5月~)、三田市オンブズパーソン (2020年4月~)
神戸山手法律事務所の津田弁護士は、理論と実践の両面で、労災問題に精通しています。
- 地方公務員の労災制度において、地方公務員災害補償基金の訴訟担当弁護士を務めていること
- 関西学院大学のロースクールで、労災保険制度を含む社会保障法や行政法の講義を担当していること
- 約20年間にわたって公務員としての勤務経験があること
神戸山手法律事務所の、つまり津田弁護士のモットーとして大切にしている「まじめに生活している人を守りたい」という想いについて綴った記事「まじめに生活している人を守りたい」理由~『偏見の心』」では、津田弁護士の人柄や弁護士としての矜持も伺える内容となっています。併せてご覧ください。
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